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七宝焼作家/田村 有紀さん

田村 有紀さん
歌手、伝統工芸の職人 ー私だけのパラレルキャリア
Profile

田村 有紀さん/七宝焼作家

2005年、「太田ゆうき」名でライブアーティストとして活動開始。07年、在学中制作した習作「金魚七宝花瓶」が好評を得る。08年、武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。15年、七宝焼制作を本格的に開始、翌年七宝ジュエリーブランド「SHIPPO JEWELRY -TAMURAWHITE-」を立ち上げる。19年、BeautyJapanコンテスト「グランプリ」受賞。
http://tamura-shippo.com


伝統工芸の職人

純銀銀彩 蝶々七宝装身具
純銀銀彩 蝶々七宝装身具

 私は明治16年創業七宝焼の窯元、田村七宝工芸のゴダイメです(現在父、田村丈雅が4代目で当主)。七宝焼発祥の地、愛知県の七宝町(現・あま市七宝町)にてわが家は、代々七宝焼業をしております。

七宝焼って

 七宝焼は金属にクリスタルガラスを焼き付ける宝飾工芸品。金や銀を使用し、繊細な絵柄を描いていきます。「宝石で絵を描く」とも形容される、美しい伝統工芸品です。私は小さい頃から七宝焼きの作業場で遊び、手伝いをし、作品に囲まれて育ちました。

村八分からのパラレルキャリア

七宝焼の純銀髑髏ペンダントトップ
七宝焼の純銀髑髏ペンダントトップ
艶をより出すため、表面を磨く
艶をより出すため、表面を磨く

 やみくもに跡を継いでも意味がないと思っていましたし、そもそも人生で一度も継げと言われたことはありません。他にやりたいことも多かったので、高校卒業と同時に18歳で上京し武蔵野美術大学に通いつつ、芸能事務所に所属しライブシンガーに。年間200本のライブに出続け、CDをリリースする中、七宝焼作品を工芸展に出品するという生活を続けました。

 当時は「ムサビの建築学科で、歌で、七宝ってどういうこと?1つに絞ったほうがいいんじゃない?」と、求めてもないアドバイスをされる機会は多く、しまいにはあざ笑われたり、落ちこぼれの烙印を勝手に押されたりしました。

 誰にも迷惑をかけず、やりたいことを必死でやっていただけなのですが、レールに乗っていない動きをするといろいろと揶揄されるものです。未来なんてどうなるか分からない。誰かがリカバリーしてくれるわけでもない。不安もたくさんありましたが、自分の信念で動いていれば成功しようが失敗しようが納得できるだろうと結論し、今できることを必死で取り組みました。

 その後、ご縁があり、さまざまなジャンルのお仕事をさせていただきました。ここで得たことは、他業種はアイデアの宝庫ということでした。私の当たり前は他所では褒められ、他所での当たり前は、私には全く知らない情報でした。新しいことを知るのは面白くてたまりません。

 しかし、私はずっと七宝焼が気がかりでした。

最後の跡継ぎ

700~800度の窯で工程ごとに焼く。作品によっては10回窯に入れることも
700~800度の窯で工程ごとに焼く。作品によっては10回窯に入れることも

 昔はこの小さな町に七宝焼の窯元が100も200もありましたが、何と現存残り8軒。どこも跡継ぎがいるという話は聞きません。私が最後の跡継ぎです。

 私は誰よりも七宝焼の魅力を知っています。この美しい七宝焼がひっそりとなくなるのは耐えられません。

 ここまで七宝焼業界が縮小していることにショックを受けますが、しかし逆に言えばブルーオーシャン。可能性に満ちているのではないでしょうか。両親の作る作品はかっこよく、七宝焼の魅力を知ってほしいと考えるようになりました。美しいは大前提、技術を磨くのは当たり前、職人は常に先駆者です。

 さらに遠回りをしてきた私。でも、こんな職人さん、なかなかいないのではないでしょうか。揶揄され、節操がないなどのネガティブ(と世間に思われてきた)要素は、私の取り柄でもあります。

 制作だけではなく、知っていただくきっかけづくりにも力を入れました。七宝ジュエリーブランドの立ち上げ、Beauty Japanコンテストへの応募(結果、グランプリ受賞)、コラム執筆、海外出展、講演会…など書ききれませんが、多種多様な場面で活動しております。結果、3年間でメディア露出は100本を超え、今ではパラレルキャリアと呼ばれるように。

私だけのキャリア

 キャリアとは、どんなふうに人生を生きてきたかという軌跡だと思っています。人それぞれたどってきた道が違う、だからこそ面白い。世の中の人全員に何かしらキャリアがある、そこからしか見えない視点は必ずあるのです。それに気付くのは何かを習ったときかもしれないし、新しい友人ができた瞬間かもしれないし、年を重ねたときに分かるのかもしれない。その気付きは、大切な誰かに喜んでもらえることにつながるかもしれません。これを読んでくださっている皆さまの明日が幸せな気付きであふれることを祈っています。


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