Wendy-Net トップページ > Ms Wendy > Back Number > 371号 注目の人 ペットジャーナリスト・メインクーンブリーダー 阪根 美果さん

Ms Wendy

BackNumber

371号 注目の人 ペットジャーナリスト・メインクーンブリーダー/阪根 美果さん

「かわいい」だけのペットブームに一石を投じたい
阪根 美果/ペットジャーナリスト・メインクーンブリーダー
Profile

阪根 美果/ペットジャーナリスト・メインクーンブリーダー
1966年神奈川県生まれ。ペットジャーナリストとして読売新聞オンライン、東洋経済オンライン等に執筆。テレビ番組、ラジオ番組にコメンテーターとして出演するなどしている。世界最大の猫種である「メインクーン」のトップブリーダーでもあり、ペット専門サイト「ペトハピ」でペットの終活をいち早く紹介。また、豪華客船「飛鳥」や「ぱしふぃっくびいなす」の乗組員を務めた経験を活かし、大型客船の魅力を紹介するクルーズライターとしての顔も持つ。



ブリーダーでありペットジャーナリスト

キャットショー、アジアで入賞を目指すラファエル君と

キャットショー、アジアで入賞を目指すラファエル君と

 世界最大の猫種「メインクーン」のブリーダーを2000年から始めました。単に繁殖をして譲渡するのではなく、ショーや勉強会等でメインクーンのスタンダード(目指すべき容姿)を学び、健全性を追求しながら、正しい飼い方などの提案も行っています。

 「かわいい」だけがクローズアップされる今のペットブームに一石を投じたいと、ペットジャーナリストとしても活動を始めたところ、興味を持っていただいた新聞社やテレビ局から声がかかり、現在は、ペットの社会問題についての執筆や、コメンテーターとしてテレビ・ラジオにも出演しています。

健全なブリーダーと悪質ブリーダーの違い

 今は、保護された犬や猫の「殺処分ゼロ」を目指す動きが高まっていますが、その功績の多くは動物愛護団体や地域の保護活動をしている人たちによるものです。しかし、犬や猫の引き取りと譲渡をどれだけ頑張っても、その活動は終わりが見えず、飼う人の意識を変えない限り、現状は変わりません。「蛇口を閉めない限り、路頭に迷う犬や猫の数は減らない。保護活動と並行して行うべき」と考えています。

 問題の責任は、安易に「命」を産出し、譲渡するブリーダーやペットショップにもあります。

 たとえば、営利目的で大量繁殖させる悪質ブリーダーのもとで産まれた子たちは、劣悪な環境で飼育され、愛情もかけられず、健全な遺伝子検査をしていないために重篤な遺伝子病を抱えていることがあります。早い時期に親から離され、社会性が身についていない子もいます。そして、安易に飼い始めた飼い主が健康状態やしつけなどに困り、相談先もなく「こんなはずじゃなかった」と飼育放棄をしてしまうケースも後を絶ちません。

 反対に、健全なブリーダーは繁殖や飼育に関する最新の情報を入手し、日々学び、惜しみない愛情をかけて育てます。直接譲渡のため、その子の生涯にわたって飼い主との付き合いが続きます。困ったことがあれば何でも相談に乗り、もし飼い主に飼えない事情ができた場合は自分が引き取る覚悟もあります。飼い主にも健全性を求め、経済状況も含めて生涯責任を負える人かどうか判断し、譲渡を断る勇気も持っています。

 そんなブリーダーを知ってもらい、飼う人の目がそこに向けば、それだけ路頭に迷う子は減るでしょう。そこで、私の活動の大きな柱になっているのが、「ペトハピ」というペット専門サイトで、同じブリーダーの立場から全国のブリーダーを一軒一軒取材し、「本当に健全なブリードをしている」と確認できた人を『太鼓判ブリーダー』として紹介することなのです。

 地道な活動ですが、ペット業界を熟知しているからこそ、そこでやるべきことがあります。飼う人の意識を変えること、それが健全化に向かう早道だと思っています。

たくさんの動物たちと暮らした幼少期

幼少期。自宅前の砂利道にて

幼少期。自宅前の砂利道にて

 私は、もともと動物好きな家庭に育ちました。家には秋田犬がいて、時々子犬が産まれていました。しかし、少したつと、かわいがっていた子犬が知らない人にどんどん引き取られていきます。その様子を見て、「なんで連れていくの?」と、幼い私は、子犬たちを守ろうと必死に抱えて妨害をしていたそうです(笑)。動物に対する愛情はこの頃に芽生えたのだと思います。

 犬以外の動物もたくさん飼っていたのですが、なぜか猫は不在。そのため「大きくなったら絶対に猫を飼う!」と、動物図鑑を見ながら「飼うならメインクーン」と決めていました。美しく、凛とした容姿に一瞬で魅了されたのでした。

 そして、30代になって希望通りメインクーンを飼い、ブリーダーにもなりましたが、そこに至るまでにはさまざまな経緯がありました。

スポーツから忍耐力 精神力を学ぶ

高校時代。県大会の100メートルハードルの決勝にて。左端が本人

高校時代。県大会の100メートルハードルの決勝にて。左端が本人

 昔から走るのが得意で、中学では県大会で80メートルハードル優勝、高校では日本選手権で400メートルハードル5位、進学した中央大学では同4位になるなど、学生時代を通して陸上競技に明け暮れました。厳しい練習や試合、寮生活では、社会に出て役立つさまざまなことを学びました。忍耐力、精神力は人一倍です(笑)。

経験を仕事に活かすことが私のモットー

 大学卒業後は学んでいた教育学を活かすため、学習塾に就職。しかし、根っから体育会系の私には少し窮屈な世界に感じられ数年で退職。その後、やりたいことを見つけるためにスペインのバルセロナへ渡りました。しかし、言葉の壁は厚く、苦労の連続でした。

 約1年後に日本に帰国しましたが、ちょうどその時期に開業したのが、船の帆の形をしたヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルでした。私は運よくその中にある会員制高級フィットネスクラブの職を得ました。入社の基準はスポーツが極めて得意なこと、語学が堪能なこと。自分のこれまでの経験を大いに活かせる仕事でした。

 そこでは、インストラクターが企業のオーナーなど富裕層の会員さまにマンツーマンで指導を行います。あるとき、ウオーキングマシンのそばについていると、目の前の海を豪華客船「飛鳥」が航行していました。それを見ながら、「この前、あの船でクルーズを楽しんできたよ。クルーを募集しているから応募してみたらどう?」と会員さまに勧められたのです。気になってすぐに調べてみると、イベント部門でスポーツのスペシャリストを募集していることを知りました。私が応募した理由は、「今までの経験が活かせる」ことと、「3年後に世界一周クルーズをやる」と書いてあったこと。寄港地に懐かしいバルセロナを見つけ、「仕事でバルセロナに再び舞い降りる」という目標を持ったのです。

 「飛鳥」ではスポーツを担当するだけでなく、船内で催されるさまざまなイベントの司会進行、カルチャー教室の担当、パントマイムを演じるなど、お客さまを一日中楽しませる仕事に従事しました。年間3分の2が海の上という共同生活でしたが、学生時代に厳しい寮生活を経験していた私にとっては何の苦もなく、楽しすぎる毎日でした。

 そのうちにアシスタントクルーズディレクターとしてマネジメントにも携わるようになり、あっという間に3年が過ぎた頃、目標だった世界一周も果たし、船を降りる決心をしました。

客船の仕事の傍ら猫のブリーダーに

ぱしふぃっくびいなす乗組員時代。フォーマルパーティーの装い

ぱしふぃっくびいなす乗組員時代。フォーマルパーティーの装い

 ところが、「次は何をやろうか」と考えていた矢先、「ぱしふぃっくびいなす」の仕事の話が舞い込みました。フェリー会社が初めて客船を造るので、経験者を探しているというのです。今度は、陸上の仕事を考えていましたが、客船の立ち上げやデビュークルーズに携われるチャンスは二度とないと思い、また船に乗ることに。

 デビュークルーズを無事に終えたあとは、クルーズディレクター(イベント部門統括責任者)として経験を重ねました。海の上は欲しいものがあってもすぐには手に入りません。船上で考えるイベントも多く、成功させるには豊かな想像力や企画力が必要です。苦労はしましたが、その分、得るものも多く、素晴らしい経験ができたと思っています。

 念願だったメインクーンを飼い始めたのは「ぱしふぃっくびいなす」のイベントが軌道に乗り、本社での企画が中心となった頃。陸上勤務の傍ら、メインクーンブリーダーとしてスタートしたのです。

愛犬を亡くした経験 ペットの終活を考えるきっかけに

愛犬レギャン(ボルゾイ)と

愛犬レギャン(ボルゾイ)と

 今はペットジャーナリストとして、一般の方々に向けて、「ペットの終活」についてもお話する機会が増えています。そのきっかけの一つが、愛犬(ボルゾイ)の死でした。

 父・母・息子の3匹を飼っていたのですが、ボルゾイは食後に急な運動をすると胃捻転になりやすい特性があり、あるときペットホテルに預けた3歳の息子がその状態になって亡くなったのです。私がそのペットホテルを選んだこと、またボルゾイの特性を事前に伝えなかったことをものすごく後悔しました。

 その半年後には、5歳の父親が脳内出血からのショック死。家の2階にいたので、50キロの巨体を私一人では降ろすことができず、早朝に近所の犬友を叩き起こして病院に行きましたが、間に合いませんでした。8歳になった母親も、獣医の誤診がもとで血管肉腫であるという診断が遅れ、あっけなく亡くなってしまいました。自分にもっと知識があれば、またさまざまな状況を想定して準備していればと、今でも後悔が残っています。その後、猛烈に勉強を始め、さまざまな資格を取りました。

 また、早くに両親を亡くした経験もあり、ふと「人間の最期のイベントって何だろう?」と、葬儀社に半年、霊園に半年、勉強のために仕事をさせていただきました。そこに見るさまざまな人間模様や後悔から、するべき人間の終活とペットの終活は同じだと感じたのです。なぜなら、ペットは大切な家族だからです。

阪根 美果さん

 今、みなさんにお話ししているのは、「ペットと一緒にしたいことをノートに30個書き出してください」。「1泊2日の旅行に行く」でも、「プロのカメラマンに写真を撮ってもらう」でもいい。それを一つずつクリアしていったら、何も考えずに毎日を過ごすより楽しい思い出がはるかに増えることでしょう。後悔を減らしていけば、ペットロスを軽減することもできるでしょう。

 ペットと共に最期まで充実した生活を送るため、知るべきことをこれからも伝えていくつもりです。
(東京都内にて取材)


BackNumber

(無断転載禁ず)