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通訳ガイド/村上 暁子さん

村上 暁子さん
「大和」まほろばの地から、世界へ和のメッセージを
Profile

村上 暁子さん/通訳ガイド

立命館大学卒。高校時代に睡眠障害を発症し現代社会に疑問を持ち、普遍的な精神性を国内外で探求。2009年全国通訳案内士の資格取得。日本の文化力と精神性(和の心)を伝えることをモットーに17年から「Nara YAMATO Spirit tours」を始める。現在は奈良・大和を中心にオリジナルのガイドツアーを実施。日本人向けのガイドも行う。
https://www.airbnb.com/narawithakiko
https://www.nara-yamatospirittours.com


春日大社でのガイドツアー(アメリカの禅センターの皆さま)
春日大社でのガイドツアー(アメリカの禅センターの皆さま)

 私は英語で外国の方に奈良を案内するガイドをしています。

 今、日本中で外国人の観光客がどんどん増えています。私はこの人気の背景に、日本全体が醸し出す「和」の力があると感じています。

 東洋と西洋。過去と未来。自然と人間。戦争と平和…。世の中には相反するものがあります。東洋の精神的な伝統と西洋の近代文明を「和」しつつ、アニメやロボットなど近未来的な世界観も併せ持つ日本は、世界でもそのユニークさが際立っています。それと同時に、着物や和食、浮世絵、温泉宿、神社などの独自の歴史や文化を持つソフトパワー=文化力も計り知れません。

 中でも注目しているのが、禅、高野山、熊野古道、四国お遍路の人気の急上昇からも分かる、“神秘的で神聖な国”という日本の霊性や精神性に惹かれる人たちです。彼らと分かち合いの場を持ちたいと始めたのがオリジナルツアー「Nara YAMATO Spirit tours」です。ツアー名に英語で「大和魂」を入れたのは、武士道的なニュアンスではなく、「大」いなる「和」の心、「魂」の意味合いを込めたかったからです。魂には、国籍も性別も関係ありません。

大神神社(桜井市)。ガイドでよく訪れる日本最古の神社
大神神社(桜井市)。ガイドでよく訪れる日本最古の神社

 なぜ、奈良・大和なのでしょうか。奈良といえば平城京の時代にはユーラシア大陸とつながり、シルクロードの東の終着点。そして神武天皇が国の中心としたのが「大和」の地。私が幼少期を過ごした故郷でもあります。

 奈良からJR「万葉まほろば線」に乗ると、左右に広がる田園風景の中に弥生・古墳時代の遺跡があり、まさに歴史の宝庫です。自然と神話やさらに1万年以上の平和が続いた縄文時代にも思いをはせることができます。縄文時代の話をすると、必ずしも人は戦争する生き物ではないことや、自然と調和して生きていた先住民的なマインドを知ることができます。

 現在、日本や欧米諸国の先進国が直面している課題解決の共通の糸口は、日本人がかつて自然体で感じていたことで、大いなるものとつながっている感覚や心の平安といった内面にあるのではと感じるようになりました。「和」は、対立や衝突、競争概念を超える高い意識の状態でないとできないことだと思うのです。

桜井市の山の辺の道にある川端康成書の歌碑。「大和は 国のまほろば たたなづく 青がき 山ごもれる 大和し美(うるは)し」(倭建命)
桜井市の山の辺の道にある川端康成書の歌碑。「大和は 国のまほろば たたなづく 青がき 山ごもれる 大和し美(うるは)し」(倭建命)

 「大和」という戦争を思い起こさせる可能性がある言葉と、「スピリチュアル」というニューエイジの言葉を使うのに抵抗はありました。しかし、“世界をまほろばに”という言葉を、吉野のとある神社の宮司様にいただいてからは、あえてそれらを組み合わせて、スピリチュアルツアーガイドという独自の路線を進もうと決めました。

 そもそも観光は「光」を「観」ること。通訳ガイドの腕の見せどころが「何を見せるか」だとすれば、私が一番見せたいのは物理的なものではありません。日本列島の美しくも荒ぶる自然と共生する中で長年培われてきたものです。

 循環の思想、謙虚さ、感謝、粘り強さ、つながりの感性。日本人の精神性は、母性的でやさしく普遍的で、プライスレスな価値があります。これらを伝えるのが私が企画するツアーです。今までのガイドの経験から、潜在的にそういった価値に気づいている外国人の方もおられ、彼らの魂に響いていると感じています。

700~800度の窯で工程ごとに焼く。作品によっては10回窯に入れることも
着物を着て奈良を巡る外国の方向けのツアー

 私には理想があります。それは、日本が持続可能な社会モデル、環境負荷が少ない「足るを知る」暮らしを提示しながら「観光立国」となることです。

 日本の地方の田舎は、景観も食も暮らしも外国人にとっては魅力的です。それらを上手に見出し、地域ぐるみでおもてなしの形にしていけば地方創生や過疎化対策にもつながっていくはずです。奈良県は歴史風土を生かし観光客の長期滞在につなげることで、日本の「観光立国」をリードしていけると考えています。

 そこで私が大和発で提案したいのが「“日本のはじまりの地”で、心身共に浄化・蘇生するスピリチュアル・リトリート」、つまり日常のリセット、癒やし、自己探求のための合宿です。体と心の「和」の空間を奈良の田舎で提供するのです。これは日本人にとっても「大人の修学旅行」のようなニーズがあるかもしれません。

 リフレッシュした心で、「同じ地球市民同士、どんな未来をつくりたいか」という希望に満ちた対話ができる場を提供できる懐の深さも、奈良・大和の魅力であり、役割だとも感じています。


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