Wendy-Net トップページ > Woman > Back Number >鰹節伝道師 永松 真依さん

Woman

BackNumber

鰹節伝道師/永松 真依さん

永松 真依さん
カツオ節の魅力を届けたい!
Profile

永松 真依さん/ かつお舎代表、鰹節伝道師

25歳の頃、かつお節を削る祖母の姿に感動し、かつお節を巡る旅を始める。2015年、北は気仙沼から南は宮古島までのかつお節産地で出合ったかつお節を販売するかつお節セレクトショップ・かつお舎をweb上でオープン。17年には渋谷でかつお食堂をオープンし、かつお節のおいしさや魅力を伝えている。
https://www.facebook.com/katsuoshokudou/


 スリスリスリ。かつお節を削る優しい音、芳醇な香り、口へ運ぶととろけるおいしさ。

 かつては台所の必需品であった削り器。現在、見かけることは少ないですが、かつお節を削った記憶のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

かつお旅を始めたころ。手には削り器を抱えて
かつお旅を始めたころ。手には削り器を抱えて

 私がかつお節と出合ったのは5年前の夏。当時、夜遊びやパーティー生活にはまっていた私を母が心配し、福岡に住む祖母のもとに行くように勧めてきました。祖母は会うやいなや、郷土料理「だご汁」を作ろうと戸棚から削り器を取り出し、かつお節を削り出したのです。かつお節をしっかりと握りしめ、削り器の刃にかつお節が当たるときに、ふっと力を入れる祖母の姿に「かっこいい」と電流が走ったことを今でも鮮明に覚えています。

 祖母の家を離れた後もその感動が忘れられず、祖母に削り器を譲ってもらいました。鰹節伝道師の始まりでした。

 まず、かつお節はどうやって作っているのだろう。そんな疑問が湧いてきました。削り器を片手に、かつお節の町、静岡県西伊豆町の田子を「回遊」しました。明治15年創業、カネサ鰹節商店さん。そこで、カツオがかつお節になるまでを丁寧に説明をしていただきました。自分の肌でしっかりと感じ、知れば知るほどかつお節を好きという気持ちが高まっていきました。

 「かつお旅」と称して、気が付けば3年半、北は気仙沼から南は宮古島までかつお節に関わる地を「回遊」してきました。初めは単にかつお節が好きという気持ちで、作り手さんを回っていました。ですが回数を重ねていくうちに、どんな人が、どうやって、どのような気持ちでかつお節を作ってくれているのかを考えるようになり、四六時中かつお節を想うようになりました。

 鰹節伝道師という肩書きは、かつお旅を始めたころに先輩が名付けてくれました。実際の活動は、クラブやライブハウスでかつお節を削ったり、かつお節をアートにしてSNSに投稿したりと新しいかつお節の世界をつくるんだ!と、みんなに面白いと思ってもらえることばかりを追求する自分がいました。

 3年目の冬。あるイベントで、私が削ったかつお節が床に落ちているのを見た尊敬する知人の女性から「かつお節がもったいないよ、本当に好きなら無駄にしちゃだめ」と言われた一言ではっとしました。

 1カ月ほぼ外出しないで考えました。その年の年越しに、かつお節を削ってひいた出汁で家族に年越し蕎麦を作りました。おいしそうに食べる家族の笑顔がうれしくてうれしくて…。その時に気づいたのです。かつお節っておいしい。それが一番の魅力だから、まずはそこをしっかり伝えようと。

宮古島の伊良部(沖縄)にてカツオの一本釣り漁に同行
宮古島の伊良部(沖縄)にてカツオの一本釣り漁に同行
かつお食堂のメニュー。削りたてのかつおぶしめし、具だくさんの旬のお味噌汁
かつお食堂のメニュー。削りたてのかつおぶしめし、具だくさんの旬のお味噌汁

 そこから大きく人生が変わりました。

 かつお節のおいしさを届けるために、かつお節ワークショップをしたり、かつお節を使った料理でイベントに出店したり、かつお節を使った料理をSNSで投稿したりしました。

 かつお旅は今まで見学をさせてもらうばかりでしたが、1週間、かつお節作りを実際にお手伝いさせてもらったり、今年はカツオ一本釣り漁にも出ました。カツオがかつお節になり、食卓に並ぶまでの自分の体感したことを、少しでもしっかり届けたいと思うようになりました。

 そして、2017年11月から、シンガーの女性が営むBar&...miiiiiというお店で朝と昼の空いている時間を使わせてもらい、かつお食堂を始めました。

 かつお節を一人一人のために削り、ごはんにかける。かつお節でひいた出汁のお味噌汁、ぬか漬け、出汁巻きたまご。シンプルなメニューですが、それが一番ストレートにかつお節のおいしさが伝わると思い、このメニューに決めました。

 使うかつお節は月ごとに変わります。月ごとに、かつお節の作り手の顔写真を飾り、その方の思いなども紹介します。どこで誰がどのようにして作ったかつお節なのか、かつお節にまつわるストーリーも一緒に届けたいと考えています。

 かつお食堂で食べるお客さまの笑顔や言葉から「ちゃんとおいしさをお届けできているな」と鰹節伝道師として少しずつ自信を持てるようになってきました。ここまで5年。まだまだ5年。ある作り手さんが「かつお節は奥が深い。一生勉強だ」と言っていました。古くから日本の味を当たり前のように支えてきたかつお節。私も一生勉強の気持ちで、このおいしさをしっかり伝え続けたいと思っています。

 かつお節は、おいしく、そして、人と人をつなげてくれるあたたかい存在です。皆さまもかつお節生活を始めてみませんか。


BackNumber

(無断転載禁ず)