温泉の力で地域をつなぐ ~アナウンサーの経験を生かした旅館再生~

- 植竹 深雪 さん/温泉ジャーナリスト・ホテル旅館コンサルタント
- 温泉の持つ湯力や美肌力等に魅せられ、国内外3,950湯以上1,600泊以上ほぼ自費で宿泊する大の温泉好き。現地に何度も足を運び、温泉全般、旅館、ご当地グルメなどにおいて温泉施設や旅館経営者へ綿密な取材のうえ各メディアに発信。情報番組のコメンテーター、雑誌連載において利用者目線のわかりやすい解説は、各業界からの信頼も厚い。著書に『おとな「ひとり温泉旅」のススメ』(三笠書房)ほか。
https://uetakemiyuki-onsen.com
自分の言葉で伝えるということ
温泉ジャーナリストとして、旅館再生コンサルタントとして、私は今、全国の湯を巡りながら仕事をしています。
私の今のスタイルの原点は、岩手の放送局でアナウンサー兼記者として勤務したことから始まりました。地元のテレビ局で、事件取材から地域ニュースまで、足を運んで自分の目で取材して、原稿を作成。その後、アナウンサーとしてカメラの前に立ち、視聴者に直接自分の言葉で伝えてきました。あの頃に磨いた「自分の言葉で、相手の心に届く伝え方」が、今の仕事のすべてを支えています。
温泉への愛は今でいう推し活、プライベートなライフワークでした。休みのたびに湯巡りを重ね、全国各地の温泉を巡る中で、温泉が持つ本当の力、心と体を癒やし、人を元気づけ、さらに地域をつなぐということを実感してきました。
温泉好きがコンサルへの道を開く
転機は2011年の東日本大震災でした。当時、私はすでにフリーアナウンサーとして活動していましたが、震災の影響で一時的に仕事がストップ。そんな中、縁があって、温泉好きが高じて知り合った方から「旅館の再生を手伝ってほしい」と業務委託の依頼がありました。最初は「温泉が好きだから」という純粋な気持ちで引き受けたのが、コンサルタントとしての第一歩。
隠れた名湯を紹介するときは、「この湯に浸かると、肩の力が抜けて、日常の疲れが溶けていく感覚」や「忖度(そんたく)なしで本当に感動した温泉」など具体的に伝えることを心がけています。
現場に赴くということが重要
マーケティングの面では、観光地の魅力を外部の目で新鮮に引き出すお手伝いをしています。SNSを活用したキャンペーンやブランディング支援で、ある地域では集客が倍近くになったケースもありました。温泉は地域の宝。その誇りを、地元の人たちと一緒に再発見していくのが、私の喜びです。
ホテル・旅館の再生コンサルタントとしては、アナウンサー経験を生かした接客指導に力を入れています。相談を受けたら、まず現地に飛び、施設の隅々まで見て回ります。スタッフさん向けに、言葉遣いや声のトーン、笑顔のタイミングなど、好感度を上げる接客をお伝えしていきます。ある老舗旅館では、スタッフの自信のなさが課題でしたが、指導を重ねるうちに「笑顔の連鎖」が生まれ、口コミが急上昇。売上の伸びも顕著に表れました。
大切にしたいのは現場主義。「現地に足を運び、徹底的に見て、感じて、自分の言葉で伝える」こと。机上の空論ではなく、湯船に浸かり、地元の人と話す。それが私のスタイルです。
温泉の力を伝えていくために
これまでの経験―報道の現場で培った取材力、アナウンサーで磨いた伝え方、そして何より温泉への愛―が、今の私を作ってくれました。
今も、集客アップを目指した温泉地を支援するため、オンラインセミナーを開いたり、デジタルPRの手法を指南したりしています。
忙しい毎日の合間に、心をリセットできる場所を、もっと身近に感じてほしいという気持ち。
温泉の力で、地域を、そして人々を元気にしていく。それが私のライフワークです。
(無断転載禁ず)
