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本音のエッセイ

366号 野食家 茸本 朗さん

インターネットにおける「おせっかい罪」

野食家 茸本 朗さん

野食家 茸本 朗

茸本 朗/野食家

1985年岡山県生まれ。会社勤めの傍らブログ『野食ハンマープライス』の更新を続け、2018年よりフリー。著書に『野食のススメ』(星海社新書)、『僕は君を太らせたい!』(小学館ビッグコミックシリーズ、原作担当)がある。近年はテレビ番組への出演や雑誌への寄稿も多い。

 3年ほど前から「野食家」という肩書を名乗っている。野山、海、川、はては街中に至るまで、身の回りの環境に存在する「食べられる物」を採取して日常の食卓に活用する、というのが活動内容だ。もちろんそれだけでは暮らしていけないので、その経験をもとに本を書いたり、漫画の原作をやらせてもらったりもしている。いわば「プロの拾い食い屋」だ。

 こういう活動をしていると多かれ少なかれ好奇の目で見られるもので、自分としては「誰も知らないおいしい食材に出合いたい」という思いで活動しているにもかかわらず、ゲテモノ喰いの変人という文脈で言及されることも多い。まあそれは受け取る側の問題なのでどうでもいいのだが、問題は「なんでそんなものを食べるのだ、危ないではないか」といちいち注意してくる人の存在だ。

 彼らは正義感にあふれ、ぼくの体のことを心配してくれている。顔見知りであろうとなかろうと関係なく、わざわざ忠告を送ってくれる。しかし、残念なことにそのほとんどが、こちらにとって不要なものだ。「○○には毒成分が含まれているので過食は良くない」「□□というキノコは似た毒キノコがあるから食べる場合は注意すべき」etc…申し訳ないが、こういう活動を生業にしている人間が、その程度の危険性を頭に入れていないとお考えなのだろうか? 相手の知識を低く見積もり、ただ忠告を押し付けてくる手合いは実に面倒である。

 さらに言わせてもらうと、仮にぼくが危険な食材を「危険だと理解して」食べたとしても、それをとがめられる理由はない。実際にぼくはあえて毒キノコを食べたり、消化のできない脂を含む魚を食べてみたりしている。いずれの食材も、それを食べる食文化が存在する、あるいは毒成分への対処法がはっきりしているなど「試すに足る根拠」があり、ちゃんとそのことも明記はしているのだが、それでも「そんなことはするべきではない」と強く言ってくる人がいる。危険性は分かってますよと返事をしても「こんなバカなことをするやつはきっと無知に違いない」と思い込んでいるので埒が明かない。

 結局、みんな自分の知識量を過信しているのだ。そして「啓蒙(けいもう)してやらなくては」というおせっかいから不要な忠告を投げつけ、ひとりで気持ちよくなっているだけなのだ。

 このようなおせっかいははっきり言って罪ですらあると思う。ぼくのことを本気で心配してくれる人は身内だけでいい。もしぼくがひどい目に遭ったとしても、それはインターネットの一コンテンツとして消費されるもので構わない。そのくらいの覚悟は当然持っているし、「笑いごとにできる程度の被害」に収めるだけの十分な知識も持ち合わせている。 

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