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本音のエッセイ

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359号 獨協大学特任教授・コラムニスト 深澤 真紀さん

草食男子はなぜ誤解されたのか

獨協大学特任教授・コラムニスト 深澤 真紀さん

獨協大学特任教授・コラムニスト 深澤 真紀

深澤 真紀/獨協大学特任教授・コラムニスト

1967年東京生まれ。複数の出版社で編集者をつとめ、1998年企画会社タクト・プランニングを設立、代表取締役社長に就任、現職。日本文藝家協会会員。著書に『ダメをみがく』(津村記久子との対談、集英社文庫)など。

 「草食男子」は私が2006年に名付け、2009年に流行語大賞トップテンをとった言葉である。「いまどきの若者は、草食男子で情けない」などとネガティブな意味で広まってしまったが、本来は若者をほめる意味だったので、当事者の若者には本当に申し訳ないと思っている。

 上の世代と違って、「もてないわけではないが恋愛やセックスにがつがつしない男性」「家族や友人を大事にして、女性と友人関係がもてる男性」という意味だったのだ。この言葉が反対の意味で流行してしまった背景には、女性誌から「女性がもてないのは草食男子のせい?」と書かれたことと、2008年のリーマンショックのあと「車が売れない」原因の「犯人」扱いされて、経済界で大きく話題になってしまったためなのだ。

 ではまず、今の若者は恋愛やセックスに興味がないのだろうか。「交際中の異性なし過去最多」というニュースが話題になるが、その元となっている「出生動向基本調査」で、若者が恋愛していたイメージの強いバブル期の1987年と2015年のデータを比べると、「恋人として交際している異性がいる」19.4%→19.7%と、ほとんど変わらない。同じ調査で「性経験なし」は1987年43.1%→2015年42%と変わらないので、今の若者が昔に比べて恋愛やセックスをしていないわけではない。

 「少子化は草食男子のせいではない」のだ。諸外国を見ても、男性が積極的に見えるイタリアや韓国でも少子化がすすんでいる。日本やこれらの国の共通点は、家族に対する保守的な価値観が残っていて、さらに若者や女性の経済状況の悪化がある。フランスや北欧などの少子化が改善した国は、さまざまな家族の価値観を認め、若者や女性に奨学金や雇用など、多様なチャンスを与えているのだ。

 「若者は内向きで海外に興味がない」というニュースもあるが、これもアメリカに留学する若者が減っただけで、さまざまな国に留学しているのだ。つまり全体の問題は、「若者の○○離れ」ではなく、「お金の若者離れ」なのだ。ほかにも若者の犯罪率や交通事故率は減り続けているなど、よいニュースが多いのだが、なぜか若者に関してはネガティブなニュースが流れがちである。

 たしかに若者とはどんな時代でも評判が悪いもので、団塊世代や私たちバブル世代もそうだった。しかしその世代は経済状況の後押しがあって、社会に居場所を与えられたのに、今の若者にはそのチャンスが少ない。私たち上の世代は、若者を「情けない」と否定するのでなく、彼らのよさや多様性を認め、チャンスを与え、支えていくことが大事なのだ。

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