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本音のエッセイ

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今月の本音のエッセイはライター 堂本 かおるさん

「出羽守(でわのかみ)」からのラヴレター 〜外国語を話そう

ライター 堂本 かおるさん

ライター 堂本 かおる

堂本 かおる/ライター

大阪出身、ニューヨーク・ハーレム在住。CD情報誌の編集を経て1996年に渡米。PR会社インターン、ハーレムYMCA学童保育所勤務を経てライターに。黒人文化、移民/マイノリティ文化、アメリカ社会事情について雑誌・新聞・ウェブに執筆。

 海外在住の日本人が2言目には「アメリカでは〜」「フランスでは〜」「シンガポールでは〜」などと言うのがうっとうしいとして、出羽守(でわのかみ)と揶揄(やゆ)される。歴史文化の違いを踏まえず、なんでもかんでも自分の住む国を上等とみなし、「アメリカでは〜だから、日本も〜すべき」と言うのであれば、それは間違っている。しかし、時には耳を傾けてもいい意見もある。

 その一つが「日本人は外国語を話せるようになろう」だ。これは「英語が話せる私はかっこいいでしょ」ではなく、生活体験からにじみ出る進言なのだ。

 アメリカに暮らす私は渡米当初、英語で苦労した。相手に「え?」と聞き返されるたびに同じことを何度も繰り返し、それでも伝わらない時の悲しさ、虚しさ、情けなさ。それでも徐々に上達し、やがて日常生活はなんとかなるようになった。英語が上達するにつれ、人との会話によって新たな世界への扉がどんどん開いた。

 例えば、俳優を目指す女性が「ユダヤ系だからクリスマスは祝わないのよね」と言った時。カリブ海の小国からの移民の若者が「里帰りできないから母に五年会ってない」と言った時。一人一人にまったく異なる背景があり、アメリカとはそうした人々の集合体なのだと知った。彼らとの会話の後、ユダヤ系、カリブ海諸国について興味が湧き、親近感も抱くようになった。

 職場での業務は機械翻訳でこなせても、こうした何気ない会話には使えない。けれどここから生まれる心情的なつながりが、ひいては仕事にも影響するのではないだろうか。

 日本も今後は世界とさらに密接につながっていく。学校教育で英語だけでなくスペイン語、中国語、韓国語、アラビア語などを選択制にし、それぞれ実地で使えるレベルまで教えてはどうだろうか。具体的な教育法は残念ながら私には分からないし、「まずは日本語」論があることも承知しているが、なんとかならないだろうか。

 ニューヨークの公立校はコロナ禍により3月に閉鎖となり、私の息子もリモート・スタディを続けている。高校生が自宅にこもりっきりはかわいそうだと思っていたら、ネットを介していつの間にか他国の友人を作っていた。

 英国やカナダなど英語圏だけでなく、中東やアジアの若者もいる。いずれも英語話者だ。日々、冗談を交わして大笑いしながら、お互いの文化も学んでいるように見える。

 親として、相手が英語を話すことに感謝しつつ、息子にきちんと日本語を教えておくべきだったと後悔もする今日この頃だ。

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