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団地再生 -団地再生を考える-

団地再生シリーズ185弾

集合住宅の過去100年と
今後の維持保全を評価する手法について

望月 重美さん

NPO法人リニューアル技術開発協会 会長
望月 重美さん

1956年生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。ゼネコン勤務を経て独立、建物維持管理に関する技術系の1級建築士事務所、(株)ファーマ代表。


マンションはどれくらいもつのか

鉄筋の腐食で崩壊が進む躯体(端島)
鉄筋の腐食で崩壊が進む躯体(端島)
鉄筋の腐食で崩壊が進む躯体(端島)
鉄筋の腐食で崩壊が進む躯体(端島)
躯体が崩壊していない所も多い(端島)
躯体が崩壊していない所も多い(端島)
解体前の同潤会上野下アパートメント
解体前の同潤会上野下アパートメント
解体前の同潤会上野下アパートメント
解体前の同潤会上野下アパートメント
解体前の同潤会上野下アパートメント
解体前の同潤会上野下アパートメント

 マンションの管理組合の会議等に出席すると、「マンションは何年くらいもつと考えればよいのか」という質問をよく受ける。その返事として、うまく維持管理されていけば100年以上もつと考えて良いと思う、と答えている。

 1916年に日本で最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅として長崎県の端島(軍艦島)に「30号棟」が建設された。1974年に炭鉱が閉山することにより無人となった軍艦島では「30号棟」は海のすぐ脇で直接塩水をかぶる場所にあるため、40年を経て現在は崩壊が進んでいる。しかし標高の高い場所にある住宅は、今でも躯体がそのままの形で残った状態にある。また、1924年からは関東大震災の火災による被害から不燃の鉄筋コンクリート造による集合住宅を供給することを目的として同潤会アパートが建設された。最後の「同潤会上野下アパートメント」は1929年に建設され、解体される2013年まで居住者がそこで生活をしていた。この躯体の状態と経過年数から考えて、鉄筋コンクリート造の集合住宅は、ほぼ80〜100年の実績があるといって良いだろう。

マンションは建替えが必要なのか

 高度成長期に一気に増えた集合住宅は、大型団地に代表されるように1960年代ころからのものが多い。その中で建替えに向かう40〜50年経過した集合住宅も、多くが鉄筋コンクリートの躯体が使用限度を迎えたということではなく、耐震性能の問題や、エレベーターがないことや階高や開口高さへの不満、サッシや設備等快適性への不満などから総合的判断により建替えの決断がされているといえる。

 その後建設される集合住宅は、さらに躯体や仕上げの技術や性能が向上しており、住み続けていくための適切な維持保全が行われていくことで、今後100年以上存続できるであろうことは容易に推測できる。

永く維持していくために

 現在多くのマンションにおいて、長期修繕計画に基づいて、大規模修繕工事や設備関連の修繕工事が行われている。特に躯体については、定期的な大規模修繕工事によりひび割れや爆裂の補修が行われ、水分の浸入を防ぐことで鉄筋の発錆が抑えられ、表層の再塗装等により中性化の進行を遅らせるなど、延命措置が繰り返し実施されている。さらには、サッシや玄関扉の改善、給排水管の劣化対策、エレベーターの劣化対策や安全性の向上等の工事も行われている。

 生活環境を維持するだけでなく、改善することでさらに永住の場として保全していこうという考え方は、高度成長期のスクラップアンドビルドの考え方や、集合住宅の価格が向上していた時期の買い替えて住んでいくという考え方とは大きく方向転換された結果であろう。国土交通省のガイドラインなどに代表されるように、長期修繕計画や計画修繕工事について長期的視野で集合住宅の維持管理を考える風潮がかなり浸透してきている。

 マンションの長寿命を考えるのであれば長期修繕計画は現状25〜30年先までで作られているものがほとんどであるが、60年程度先までの期間で試算してみることも必要であると考える。そこには世代交代もあり、時代のニーズも読めない部分が多いが、長寿命が前提であればそれなりに考えていかなくてはならない事項も見えてくる。

 また、近い将来に大きな地震が来ることが予測されている地域においては、大規模修繕直後に被害を受けても足場を架けて補修ができる程度の費用を見込んでおこうという考えを持つ管理組合もあり、ここでもきちんと維持していきたいという考え方が進んできているといえるだろう。

維持保全に対する評価と価値

 このように積極的に長期的な視野を持って維持管理を進めているマンションも、それが評価されるための判断基準が明確となってはいない。例えば、専有部の売買を考えたときにきちんと共用部の維持保全がされているものであれば、それが売買価格に反映されて良いはずである。

 そこで、きちんと共用部の維持がされているマンションがそれなりの評価を受けることができることを目的として、マンション関連団体が連携し「ヴィンテージマンションプロジェクト推進協議会」が設立された。ここでは一定の評価基準を設け、マンション共用部評価書を作成するシステムを用意している。

 この評価書が作成されることにより、(1)マンション共用部工事のわかりやすい履歴管理、(2)宅建業法改正に伴う重要事項説明(建物の維持修繕実施状況)要因資料、(3)金融機関融資・不動産担保評価のための参考資料、(4)売買時の既存マンション購入者の見えない不具合の不安解消のための参考資料、となる。さらに、これをきっかけとして、ただ単に新築であること、駅に近いことなどでそのマンションの価値が決まるのではなく、維持保全をきちんと考えそれが実施されているという事実がそのマンションの価値として認められることを目的としている。

 評価書の作成は、評価員として認定された者が一定の基準に基づいて採点していく方式となっており、その内容は躯体、構造に関すること、建物の仕上げに関すること、主要な設備に関すること、付帯設備や付加性能に関することなどにおいて、その修繕が適切な材料や工法を用いて実施されているか、さらには積極的な改善が行われているかなどが評価されるようになっている。評価書の作成にあたっては、過去の修繕履歴、直近の大規模修繕工事の内容、隠蔽部分の設備関連の確認など現地確認も含めて厳正な評価を行うことが必要となっており、今までにはなかったマンションの共用部の評価が目に見えるものとなり、さらに共通事項として比較できるようになったといえる。これが広く採用されるようになれば、新たなマンションの維持保全の考え方としての参考となり、管理組合として修繕積立金に関する合意形成や、長く住み続けるために次に何をすべきかを整理することにも活用できるものと考える。

ヴィンテージマンションという評価

ヴィンテージマンション認定マーク
ヴィンテージマンション認定マーク

 なお、新築後30年以上のマンションで高評価(評価書でAAAの評価を得た場合)の物件にはヴィンテージマンション認定マークが協議会から発行され、エントランスなどにその表示が貼られるシステムとしている。この認定マークが認知されていくことによる相乗効果にも期待したい。

 長期的に良い住宅に住んでいこうという風潮の中で、さまざまな取り組みが行われているが、マンションの場合は共用部と専有部という特殊な形態のために、その線引きの問題や管理組合として施設を管理することの難しさがある。共用部の評価を即専有部の売買評価へとつなげることは簡単ではないかもしれないが、今までとは違った考え方として、築後100年以上はもつであろうことが見えてきたマンションの今後を考えると、このような共用部の評価が積極的に行われていくことの必要性が見えてきたといっても良いのではないだろうか。

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団地再生支援協会 www.danchisaisei.org/