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地域再生 -地域再生を考える-

地域再生を考える 第1回

沖縄の魅力を世界へ
設計を通じて沖縄を考える

柴山 義文さん

株式会社グローバルプランS 代表取締役
柴山 義文さん

1958年長崎県平戸市大島村生まれ。長崎総合科学大学建築学部卒業、松田設計、合同設計むつみ、株式会社国建を経て2019年1月に株式会社グローバルプランSを設立。独立し新たなスタート地点に立つ。一級建築士。沖縄県南風原町在住。


沖縄に住んで

 沖縄に来て36年目になる私は、沖縄で言われるウチナームクー(本土出身のお婿さん)である。

 長崎県出身の私は、友人に誘われるまま、沖縄の設計事務所に入り今日までさまざまな設計に携わることで沖縄の魅力に触れ、これからの沖縄を考えるようになった。

沖縄という地域を意識し始めたこと

沖縄の住まいに提案した計画案(1984年)
沖縄の住まいに提案した計画案(1984年)

 初めて沖縄を意識し設計を行ったのは、沖縄に来て5年目のころである。沖縄の住まいというテーマで競技設計があり参加したときである。サブタイトルが『沖縄の気候、風土に適した住宅像を求めて』であった。

 そのころは、設計に対する不安や沖縄にいる意味などを漠然と考えていた時期であったため、改めて沖縄での物作りについて考え、沖縄の風土や歴史、風習などを学ぶきっかけとなった。結果的に、佳作入選することができ、自信が芽生え、もう少し沖縄に留まることとした。27歳の時である。

ブセナテラスーリゾート地沖縄の再生を考える

沖縄のチャンプルー文化を取り入れ多様で開放的創りのリゾートホテル(1997年)
沖縄のチャンプルー文化を取り入れ多様で開放的創りのリゾートホテル(1997年)

 ちょうどそのころは、バブルの絶頂期であり、一人で何件も抱える状況の中、リゾートホテルを手掛けることとなる。リゾートホテルとは何か、どのようなものを創造すれば良いのかなど考える日々だった。海外に何度か視察に行き、外を見ることで沖縄の良さを見つけていたのかもしれない。

 間もなくバブルがはじけ、予算のない中、本格的な設計をすることとなった。パノラマに開ける美しいコバルトブルーの海をいかに感動的に見せ、体感としても感じてもらえる設計を行うことができるかを最大のテーマに掲げ進めることとした。

 目の前に広がる美しい海をできるだけダイナミックに見えるようエントランスを4階のレベルに設け、風が抜けるオープンエアーのロビーやテラスを設けた。さらに外部に開放されたブリッジを渡り客室に導くなど、できるだけ開放感のある空間を作り出すよう工夫を施した。その当時台風の襲来が多くある沖縄においては、あまり見られない空間を構築することとなった。それから早いもので20年の歳月が過ぎようとしているが、沖縄で泊まりたいホテルの上位に位置づけられていることは、ホテルのサービスに起因することが大きいが、その一翼を担うことができたことをうれしく思う。

 ただ心残りなことは、完成して間もなくしたある日、ある人にホテルが立つ前の美しい景観は巨大な壁により失われたと言われたことだ。新たなものを作り、場所を再生することの難しさを嫌というほど感じた瞬間だった。

沖縄を世界へ発信

サミット会場となった万国津梁館(2000年)
サミット会場となった万国津梁館(2000年)

 沖縄サミットが行われたのが2000年。その会場を設計することになるとは、今思えばすごい経験をしたと思う。建物として存在していない場所がメイン会場として決まったことは、いまだに沖縄サミット会場だけだと思う。当時サミットの会場として沖縄が選ばれない場合は、プロジェクト自体継続できないとも言われていた。

 ところが決まった翌日から状況が一変。報道機関の取材や各省庁関係者等からの問い合わせや打合せ等何か得体の知れないものと協議しているようだった。その中でなぜメイン会場が沖縄に決まったのか、そしてその会場は、どう表現し、どうあるべきか。私たちは、この疑問に対し、さまざまな規制の中、できるだけ自然に寄り添う佇まいとすることとした。その方法として、建物を分散配置し、建物間を外部通路(屋根のみ)でつなぐことで、そこにある沖縄の豊かな自然を取り込み建物と一体的に表現した。

 その後サミット効果で、飛躍的に沖縄観光が伸びていくこととなる。これもまた地域再生ということになるのだろうか。

沖縄の新たな魅力を見つける

切手になったOIST宿舎(2015年)
切手になったOIST宿舎(2015年)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)関連の設計業務に携わるようになってから12年。沖縄にとって、これまでにない素晴らしい施設ができた。将来を背負う子どもたちに大きな夢と希望を抱かせ、新たな魅力を生み出す施設になると思う。今でも多くの基地が残り、戦跡から平和発信している沖縄。ホスピタリティー豊かなリゾート地としての沖縄。それらに加え新たな魅力として、世界中から優れた研究者を集め、研究開発し、世界に発していく沖縄になることだ。現在、全体構想の6分の1が完成している状況であるが、世界40カ国以上から優秀な研究者や学生が集い研究している。今後門前町を含めその周囲の環境を整備していくことにより、更なる沖縄の魅力を生み出していけると思う。

原風景の中に佇むリゾート施設(2018年) 隣接して設けた養蜂場(奥が筆者)
原風景の中に佇むリゾート施設(2018年) 隣接して設けた養蜂場(奥が筆者)

 また、昨年7月にオープンし新たな魅力を生み出している施設は、手付かずの自然が多く残る東海岸に建つオーベルジュ。食にこだわりを持つレストランひらまつと共に作り上げた究極のリゾートホテルである。これまで得た経験と沖縄の自然を最大限活かし、養蜂等新たな魅力も取り入れたリゾートホテルである。今後これらが地域再生の先駆けとなることを願っている。

私の考える地域再生

 まだまだ至る所に埋もれている、その場所にしかない原石を見つけ出し、磨き輝かせ発信していくことだと思う。

「地域再生を考える」編集委員会

地域再生を考える 企画の開始にあたり

 都市であるか地方であるか、あるいは過疎地であるかを問わず、「地域」は社会を構成する重要な単位であり、遠い過去から連綿と続く私たちの歴史に重要な役割を果たしてきました。

 変化に対応し、地域が常に再生され、活力を持ち続けることは極めて重要なことです。

 さまざまな立場の筆者が、ハード・ソフト、あるいはマクロ・ミクロ等さまざまな切り口から、「地域再生」についてレポートすることにより、読者の皆さまとともに「地域再生を考える」ことは優れて有意義なことであると考え、この企画を開始しました。今後にご期待ください。

「地域再生を考える」編集委員会