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地域再生 -地域再生を考える-

地域再生を考える 第6回

地域に寄り添い、まちの課題に主体的に取り組む

山根 啓典さん・宇山 穂さん・川上 佐知さん

復建調査設計株式会社 社会デザイン創発センター
センター長 山根 啓典さん(写真中)
副センター長 宇山 穂さん(写真右)
主席研究員 川上 佐知さん(写真左)

社会デザイン創発センターは、復興、エリアマネジメント、交通、エネルギー、行政マネジメントなど、多様な分野の専門家6名で、地域課題の解決に向けて取り組んでいる。


地域再生のプレイヤーとして

 当社は、道路、鉄道、河川など社会インフラの計画、設計や都市計画等の行政計画の策定支援を主要な事業としている。事業規模や事業難易度にもよるが、これらは中長期的なスパンで捉えるものがほとんどである。一方、近年の人口減や高齢化のスピードは極めて速く、特に地方部では、数年後をどうするのかといった間近に迫るさまざまな社会的課題を解決することも重要となっている。そのため、当センターは自らが率先して地域づくりのプレイヤーとなり、地域と連携・共創による新たな地域再生に向け取り組んでいる。

 ここでは、エリアマネジメント(以降エリマネという)、交通、エネルギーに関する取り組みを紹介する。

エリマネによる地域再生

まちの課題は誰がみるのか
〈まちの課題は誰がみるのか〉

 行政の仕事では、インフラを造る人と管理する人は別で、住民の思いを込めて造った公園だとしても、維持管理する人に継承されていないことは多い。美しく整備されていた芝生の緑道は、手入れが行き届かず、繁茂していてもやむを得ない。緑道が繁茂した状態で最も不利益を被るのは隣接企業や地域住民であるが、結果的には資産価値が棄損し、税収低下につながり、さらに管理水準が低下するなどの悪循環に陥る。

 目の前にあるまちの課題は、まちを捨て、引っ越さない限り、自分たちに突きつけられた課題であり、行政任せで済む話ではなくなった。

〈まちを支える仕組みとなるエリマネ〉

 当社が事務局として運営している「エキキタまちづくり会議」は、地域住民と企業、行政が一体となって立ち上げた組織である。純粋に「まちをよくしたい」との思いを持ったメンバーであるが、思いだけでは解決できず、個々の活動としての限界を感じていた。

 エキキタまちづくり会議では、長期的なビジョンを共有した上で顕在化しているまちの課題をできることから対応している。例えば、エキキタを代表する場所でありながら管理が行き届いていない公園の指定管理を受け、質の高い維持管理を実現するとともに、集客力のあるマルシェを開催し、この収益を維持管理に還元している。

 これらの活動の積み重ねが評価され、広島市より、第1号のエリマネ活動認定を受けた。この認定により、有効空地や公園の規制緩和が認められ、一定の収益活動を行うことも可能となった。行政も、お金はなくても知恵を出し、前例主義から脱却し、新たな試みへと踏み出す機運が芽生えている。まちの課題はさまざまであり、エリマネのかたちも明確な解は存在しない。しかし、地域住民や企業とともに、まちの課題にむきあい、主体的に取り組み、実践することで見えてくるものは多い。

 今後も、地道に活動を続け、まちの課題に対する処方箋を蓄積することが地域再生の糸口となると考えている。

高台団地の移動再生

松江市高台団地における地域共生型移動支援
松江市高台団地における地域共生型移動支援

 地域モビリティの維持確保は各地で大きな問題となっている。島根県松江市においても高齢化率の高い高台団地において高齢者の移動の足の確保が地域の大きな課題であった。親交のある松江市内の社会福祉法人からこの課題に関する相談を受け、まずは地域自らが主体的にこの課題を継続しながら解決していくことが重要と考え、平成29年に任意組織「エコ×ユニバーサルな松江のまちづくりを考える会」を立ち上げた。さまざまな地元事業者が参画しており、関係機関と調整を行いながら、持続的に移動の足を確保することを目的に実証実験や本格運行に向けた調整を行っている。

 平成30年度は、グリーンスローモビリティ(7人乗りの電動カート)を活用して高台団地における生活交通の確保に向けた実証実験を約4カ月に渡り実施した。現在、無償運行であるが、有償化に向けた手続きに着手しており、今後この取り組みが移動再生の1つのモデルになればと考えている。

ユニバーサル観光の移動支援を通じた地域再生

 2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、ユニバーサルツーリズムの推進を通じて地域再生につなげる取り組みが各地にみられる。当社では、これに関連した取り組みとして、松江市において高齢者や障がい者の観光移動を支援する取り組みに着手している。松江市は中心部以外にもさまざまな観光スポットが点在している。一方、長時間の観光移動やトイレや休憩地の確保、更には体調悪化時の対応などは大きなリスクである。交通事業者やドライバーが減少する中、障がい者用の移動手段の確保も難しくなっている。

 そこで、複数の社会福祉法人が連携し、各法人が所有する福祉車両を観光移動手段として活用し、介護福祉の専門家がいる社会福祉施設を休憩・乗継拠点としてネットワーク化する実験を平成30年度に行った。3つの社会福祉法人と連携し、実際に全盲の観光客の移送実験を行った。利用者からは高い評価を得られたが、さまざまな課題も明らかになった。

 今後も引き続き実証実験を重ね、ユニバーサルツーリズムの視点から地域再生に取り組むつもりである。

エネルギー事業と地域経済循環

 10年後の未来を想像する。

 人口減少による国内市場は縮小、生産人口の減少により、自治体の税収は減少すると予想される。一方で、高齢化に伴う社会保障関連費は増加し、地方財政は厳しくなり、質的・量的に公共サービスの維持は今以上に難しくなるだろう。この目前に迫る課題に対し、ヒントとなる例がドイツにある。

 ドイツ国内で1400社以上存在する都市公社「シュタットベルケ」は、19世紀の産業革命以降、水道やガス、電気、公共交通、ごみ収集などインフラを整備、運営を担う事業体として設立された。現在、その多くは電気等のエネルギー事業から得られる利益を活用し、単独での維持が難しい公共交通や温水プールの運営などの公共サービスを維持している。

 その特徴の1つは、自治体が100%出資しているものの、完全独立採算で事業が成立している点にある。地域内に経済循環を生み出している点である。域外からのエネルギー購入費を域内に留めることはもちろん、各種事業を地元企業に委託することで雇用創出が生まれ、所得の域外流出を抑制している。

 東日本大震災において甚大な被害を受けた岩手県宮古市は、エネルギーの地産地消を進め、再び安全・安心で快適なくらしを確保するスマートコミュニティ事業に取り組んでいる。弊社は本事業において、宮古発電合同会社(SPC)へ出資し、塩害を受けた田畑で発電事業を行っている。その電力は、地域の公共施設を中心に約200カ所へ送電され、CO2削減にも貢献している。

 近年、日本でも自治体が関与する地域新電力が増えつつあるが、その多くは宮古市のように地産エネルギーの公益的活用に留まっている。先述したとおり、今後の地方行政を想像するに、シュタットベルケのようなエネルギー事業を起点とした利益の分配、地域経済循環の醸成等の付加価値の追求は重要になる。

地域のまち医者として

 現在、我々が進めるエリアマネジメントや次世代モビリティ、エネルギー等に係る取り組みは、将来、変わりゆくまちづくりに向けた布石であると考えている。地域のどういった資源を活用し、誰が、どのようなスキームで、公共サービスを提供・維持し、何を地域に得ていくか、そこでの連携・共生のあり方とは何か、地域のまち医者ともいえる我々建設コンサルタントが担う役割は大きいと考える。

「地域再生を考える」編集委員会

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進むサステナブルな団地・まちづくり

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