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団地再生 -団地再生を考える-

団地再生シリーズ189弾

スマートライフ化から団地再生を考える

尾上 由野さん

オフィス・オノウエ 代表
尾上 由野さん

1975年愛媛県生まれ。オフィス・オノウエ代表。事業構想修士。社会関係資本を力点とした地域資源の活用をテーマに事業を展開。


スマートライフとは

スマートライフ化のイメージ
スマートライフ化のイメージ

 スマートフォンから始まり、スマートスピーカー、スマート家電、スマートハウスなど「スマート〇〇」は、高度な情報(データ)処理機能を持つモノ・システムのことを指す。我々の生活はスマートライフ化が進んでいるといわれている。

 「情報化」と「スマート」は意味が違う。単に情報処理機能が高くても「スマート」ではないはずだ。調べてみると、スマートライフについて以下のような記述を見つけた。

 “スマートスピーカー、スマートフォンでの音声アシスタント等、音声デバイス活用機会の拡大を契機に、スマートホーム市場が動き出している。また、さまざまなライフデータを活用したビジネス提案が活発化している。消費者のニーズを踏まえた複数のサービスにおいてこれらの情報の利活用を推進し、サービスの高度化につなげていくことが求められている。その一部として、家電やウェアラブル、センサ等で得られた環境情報、ユーザー情報などライフデータがつながり、生活の不便を解消している状態がスマートライフ化といえる。”(経済産業省商務情報政策局情報産業課「スマートライフ政策について」※平成30年2月)

 一読し、ずいぶんカタカナが多い。つまりそういうものであるようで、古来の日本語では少々説明しにくいスマート〇〇なる新しい商品群が、新たに作り出すサービス全体を指すようである。情報がつながり、便利さが新たな便利さを生むシステムである。

生活が情報化していく

生活の中に見られるスマートライフ化の兆し
生活の中に見られるスマートライフ化の兆し

 現在の生活に目を落とすと、私自身の生活にスマートライフ化の兆しをいくつか見てとれる。

 一つがスマート体重計。スマート体重計は毎日計測する体重を、自動でスマートフォンに転送する。専用アプリを使って体重の推移を確認し、健康管理するものである。

 加えてフィットネスアプリも活用している。スマートフォンを携帯し活動するだけで、その活動を「ウオーキング」「サイクリング」など自動選別し、時間や活動の強さをデータ・グラフ化してくれるアプリである。よく活動した日にはアプリが褒めてくれるなど、動機付けもサポートしてくれる。

 現時点では各データはつながりをもたない単体のデータであり、「ライフデータがつながり、生活の不便を解消している状態」とはいえない。近い将来それらデータが紐づきスマートライフが実現、一般化していくとして、現在はその芽出しの時期といえる。

目的の情報化

 「体形をシェイプしたい」ことがスマートデバイス、アプリを導入したきっかけであった。日々の移動を自転車に替え、食生活を改善した。運動量、食事、体重を日々計測、記録、観察、評価した。この一連のおかげで、一定の減量に成功した。

 筋肉量の増加から体形はシェイプされていても体重の減少が頭打ちとなる期間があった。ある時のこと、友人から「痩せたね」と言われた際、私は「いや、体重は変わらないよ」と浮かぬ気持ちで返答したのである。

 気づかぬうちに、「体形をシェイプする」という目的から、体重の値を下げること(目標指標の達成)に目的がすり替わっていた。

 計測する、そして(デジタルで)記録する。またそれら記録の遷移を観察、評価する。これは生活の情報化であり、情報化が私に与えたのは、目的の情報化でもあった。

上司は「アルゴリズム」

Uber Eats配送スタッフとして従事する筆者。首にかけたスマートフォンから指示を得、店舗から住居へ飲食物を配送する
Uber Eats配送スタッフとして従事する筆者。首にかけたスマートフォンから指示を得、店舗から住居へ飲食物を配送する

 シェアリングビジネスを理解する意味合いもあり、フードデリバリーサービス「Uber Eats」配送スタッフとして働いたことがある。高度な情報処理機能を持つシステムとして、スマート労働といえる。スマートライフ化の一つである。

 従事するスタッフはみな個人事業主であり、空き時間にアプリをオンにすることで作業が開始でき、オフにすれば終了できる。それは時間のシェアリングを意味している。またシェアリングサービスの特徴ともいえる、顧客・スタッフ間の相互評価機能も備えている。

 スタッフは自身のスマートフォンアプリに到達するリクエスト(オーダー)に従って作業をする。断ることもできるが、断る件数が増えるとリクエストが減る可能性がある。顧客より高評価を得たスタッフにはより多くのリクエストやインセンティブが集まる仕組みを持つ。またそれらは自動化されている。

 このスマート労働において、指示や評価はアルゴリズムが行う。言い換えれば上司はアルゴリズムといえる。かねてより平成生まれの上司を持つ未来を危惧していたが、上司がアルゴリズムになる現実が先に来るとは驚きだ。そんな時代がきているのである。

 結果、フードデリバリーサービス「Uber Eats」は、労働やサービスにおける課題を最適化し、急激にその利用者と範囲を拡大している。

スマートライフ化は団地再生の課題を解決できる?

 スマートライフ化は団地再生における多くの課題を改善していくと考えられる。例えば「買い物難民」にはネット宅配サービス、デマンド交通システム、「独居高齢者の事故」には家電のモニタリングによる異常検知、「遠隔からの安全確認」には、入退出管理システム、テレビ電話などICTコミュニケーションなどが対策としてあげられる。ただしそれらの多くは利便性、あるいはトラブルを早期に判別する役割、つまり最適化にとどまっている。

 トラブルへの即時対応こそ本質的課題であり、そこを考えるとコミュニティ、共助互助関係の必要性へと立ち戻っていく。コミュニティのない状況において、スマートライフの効果は無人のビルに鳴り響く警報と変わらない。

曖昧さを残す必要

 個の課題解決と社会の課題解決は相反することもある。スマートライフ化によって個で解決できることが増えるのはすばらしいことだが、半面、責任領域が明確化し、コミュニティ意識が薄くなっていく可能性もある。

 目の前にあるスマートライフ化とその設計において、他人の助けが必要な領域をあえて残す努力も必要と考える。言い換えれば「お互いさま」の領域ともいえるし、「許しあう関係」を保つ努力ともいえる。

 多様な人が肩寄せ生きている団地、ひいては現代社会において、人の間に情報化できない「曖昧さ」の緩衝を残すことが重要ではないだろうか。

団地再生まちづくり3

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団地再生支援協会 www.danchisaisei.org/