じいちゃんへ
最後に会ったのは去年の夏でしょうか。
しばらく顔も見せずにいた不幸な孫をどうか許してください。
石橋には昨日着いたよ。じいちゃんが勤めていた国鉄に揺られてニ時間ばかり。
通勤や通学にかかる時間としては、決してたいした時間ではないと思います。
でもそのわずかな間に、いろいろなことが去来しました。
じいちゃんの老後の趣味は蕎麦打ちでしたね。よくうちにもおすそわけしてくれて、
母が湯がいてくれたものをおいしく食べたものです。 「おいしかったよ、ありがとう」と
伝えたとき、私の頭を撫でてくれたじいちゃんの手。細く、でも力強くて大きな手。
心地よい思い出や楽しい思い出を宇都宮線の穏やかな揺れの中で感じる二時間でした。
じいちゃんは人々のこういう時間を運ぶ仕事をしていたのですね。
たくさんの愛情を注いでくれてありがとう。じいちゃんにひ孫の顔を見せてあげられなかったのが残念です。
どうか安らかに。おやすみなさい。