マンションは、年月の経過とともに必ず劣化していきます。
 建物全体の機能低下、材料劣化は避けることができませんが、それらを最小限に食止め、建物を最良の状態に維持することはできます。
 マンションの居住性能、美観を保ち、必要以上の劣化を防ぎ、そして修繕費の資金運用の選択肢を広げるために、計画的に修繕工事を実施することは必要不可欠なのです。

長期修繕計画とは?
 修繕が必要であると頭ではわかっていても、区分所有者それぞれの考え方や資力はまちまちで、なかなか足並みが揃わないのが実情でしょう。
 そこで、「修繕項目」「修繕周期」「修繕仕様」「修繕概算金額」に対し、現在の修繕積立金やその残高などを勘定して、今後20〜30年間の修繕工事に必要な資金との関係をシミュレーションします。これが、長期修繕計画です。
 大規模修繕工事を成功させるために最も大切なポイントは、区分所有者全員の共通の認識です。長期修繕計画等を参考に、まずは、意識作りから始めていきましょう。

住民の意識向上のために
 提案された長計を各区分所有者にそのまま説明しても、理解される方が思いのほか少ないのが現状のようです。そこで、理事会でまとめた長計、つまり、いつ、どのように修繕をおこない、そのためにいくら積み立てる必要があるかという説明をする前に、必ず簡易の建物診断をし、その診断書を全員が理解できるよう、説明会を開催します。または、全員に呼びかけて建物の見学会を開催し、専門の技術員の同行による説明を受けながら、建物の劣化状況を自分達の目で見ることによって十分に把握します。

優良中古マンション基準

経過年数
戸当りの修繕積立金
(平均月額)
1〜4年目
6,000円 
5〜9年目
7,000円 
10〜16年目
9,000円 
17年目以降
10,000円 
※他にも、管理費と修繕積立金が区分して経理されている、修繕積立金の未収額が5%以内である等様々な条件がある。
 又、駐車場収入等で、明確に将来の修繕のために積み立てている資金を含む。

表1:修繕積立金額の目安
   (住宅金融公庫)


 こうした住民全体でのイベントによって意識を高める努力をしていかなければ、なかなか大規模修繕工事を成功に導くことは難しいでしょう。

修繕積立金
 修繕積立金ですが、参考として、住宅金融公庫より表1に示すような優良中古マンョン基準が設定されています。優良中古マンションと認定されるか否かによって、売却額にも大きな差がつきます。
また、戸当り修繕積立金(月額)の全体平均は7,378円で、経過年数の大きいものほど金額が大きくなる傾向にあるようです。分布としては、一万円超が19.2%で、3千円以下が15.4%存在しています。そして、長計の作成状況別で見ると、作成済マンションが7,450円、未作成が7,585円で、大きな差があるようです(平成11年度 マンション管理センター)。

●ポイントは住民の意識向上●

大規模修繕工事の進め方
 大規模修繕工事が本当に必要な時期にきているか、必要とすれば工事の範囲・工事費用等をどのようにすれば、と頭の痛い問題が山積みしています。そこで、的確な調査診断を受けて、納得のいく進め方について右図1に表しています。
大規模修繕工事を実施するにあたり、大切な資金が無駄にならないためにも、過剰な仕様にならないよう進めましょう。

修繕委員会の設置
 最近は、大規模修繕工事に向けて修繕委員会を設置し、このメンバーと理事会とが協力して準備を進めていく組合が増えています。委員については、必要な時期がきたら建築や経理に詳しい住人から募集します。修繕委員会では、現状調査、仕様・工法・工事費用の適否、工期、工事中の居住者対応などの事項の検討をおこないます。
 理事会の負担を軽くするためにも、修繕委員会の設置も一案です。

管理会社がコンサルタント業務をするメリット
 マンションの修繕工事項目は実に多様で、多岐に渡る工事項目すべてに目配りできる知識、経験が求められます。さらに、修繕計画を作成していくための建物の劣化状況の診断、工事仕様、工法の選択などをおこなうのにコンサルタントが必要となります。
 ここで、管理会社がコンサルタントをする場合のメリットを述べてみます。
○建物の月次点検をおこない、また、建築士による年次点検をおこない常に建物の状態をつかんでいる
○(月次、年次)建物点検報告により、建物の工事履歴を把握し、きめ細かい大規模修繕計画ができる
○日ごろのマンション管理をおこなっているため、入居者の事情を考慮した工事監理をおこなえる
 大規模修繕工事は新築の工事とちがい、工事現場で入居者が生活しているようなものなので細かい配慮が必要である
○工事完了後のクレームにも、日ごろの管理をおこなっているので迅速に対応できる

 以上のようなメリットが考えられます。
 ただし、管理会社であればどこでもよいというわけではありません。管理会社によって、能力には大きなちがいがあります。建築、設計に関するノウハウが要求されることはもちろんですが、日常の管理がしっかりとおこなわれている管理会社であれば、コンサルタントの面でも頼りがいがあるというものです。


主な修繕工事時期の目安
・鉄部塗装
(非常階段 やベランダの手すり)
・外壁(コンクリートの劣化)
・屋上防水層(漏水の原因になる)
・給水管、ガス管
・電気設備
(TVアンテナ、照明、非常灯)
・貯水槽の交換
・エレベータの交換

5年
10年
15年
20年

10〜20年
20〜30年
30年

大規模修繕工事計画の進め方  
管理会社 管理組合

長期修繕計画の提案  
 
日常点検、定期点検 不具合箇所把握
月次・年次点検報告
アンケート調査 アンケート実施
集計結果報告  
総会又は理事会で決定
建物診断を実施 ・建物診断実施
修繕計画を提示 ・修繕計画検討
  ・修繕委員会の提案
 
  総会で決議
  ・修繕計画内容
  ・資金計画負担方法
  ・コンサルタントの委託
  ・工事施工会社選定方法
 
コンサルタント 工事監理契約締結
工事仕様の検討
(現場説明等を含む)
施工会社選定の助言 工事施工会社選定
 
工事見積施工計画の助言 工事請負契約締結
 
説明会助言 施工内容の住民説明会開催
   
工事着工へ

図1:大規模修繕計画の進め方
(コンサルタントの委託、工事着工まで)