「大規模修繕工事」。言葉では聞いたことがあるけれど、実感がわかないという人も多いでしょう。ましてや、現在、新築や築2・3年くらいのマンションに住んでいる方々には、自分たちのピカピカのマンションが劣化していくとは考え難いものです。しかし、マンションは必ず劣化します。劣化をいかに食い止め、手入れしていくかによって、20年、30年後のマンションに大きな差が出てきます。安全で快適な暮らしを送るため、資産価値を維持するために必要なのが“修繕工事”です。ここでは入門編として、工事の必要性や現時点でできることなどを見ながら、マンションの将来について考えてみましょう。



■劣化の順序はひび割れ→錆→破壊
 マンションは鉄筋コンクリートで造られているので、一見とても強固に見え、半永久的な建物というイメージが強いのですが、年月の経過とともに劣化が進みます。
 立地条件や風雨にさらされる状態、仕上材などによって、劣化の速度はさまざまですが、劣化自体は避けられません。
 もちろん、阪神大震災でも、マンションの建物自体が崩壊して発生した死亡事故は十数件と安全性が証明されたように、鉄筋コンクリートは木造建築物に比べると、燃えにくいだけでなく、機密性や耐震性の面でも優れており耐久性は抜群です。
 ただし、コンクリートも永久のものではありません。コンクリートはセメントと砂と砂利を合わせたところに水を加え練り上げたもので、それ自体が浸透性のある材料です。そのため、乾燥するにつれ収縮し、収縮した分がひび割れとなってあらわれます。ひび割れが大きくなるとそこから雨水などが浸透し、中の鉄筋を錆びさせ膨張、コンクリートが破壊されます。
 外装の塗装やタイルは、見ばえをよくするだけではなく、このようなコンクリートの構造体を保護するための要素も含んでいます。
 また、バルコニー・階段などの手摺や鉄製の避難階段などの錆、屋上などの防水機能が損耗することによる雨漏り、給排水管の詰まりや管内にできる錆による赤水、水漏れなど、年月が経過することによって起こってくる劣化現象が、建物本体が持つ性能を低下させます。

■定期的な修繕工事は不可欠だ
 こうした機能低下、材料劣化は避けることができません。ただし、それらを最小限に食い止め、建物を最良の状態に維持することはできます。劣化を放置したままでは、劣化の進み具合もどんどん増していきます。それとは逆に、小さなひび割れを埋めたり、定期的に給排水管などの清掃を行えば、今以上の進行を防ぐことができます。
 劣化するだけ劣化してから補修するのと、定期的に初期の段階で補修するのとではかかる費用も全然違ってきます。ましてや、何の手入れもせず放っておいて、劣化しつくしたコンクリートの一部が崩落することなど、絶対に起きてはならないことです。
 修繕工事とは、生活に支障が出るまで劣化してから初めて行なうものではなく、常に建物を最良の状態で維持していくために、定期的に行っていくものなのです。

コンクリートは永遠不滅のものではありません。
劣化もすれば、老化も起こる
だから、手当(修繕)が必要です。

     
 修繕工事といっても、外壁や屋上、共用廊下などは共用部分にあたるため、区分所有者全員の意思を反映させながら行なうことになります。
 頭の中では、定期的な修繕が必要だと分かっていても、区分所有者それぞれの考え方や資力がまちまちなので、実際はなかなか足並みがそろいません。また、定期的に、初期のうちにといっても、外壁のひびや給水管の錆などは自分の目で簡単に発見できるものではなく、ましてや日々点検するわけにもいきません。
 そこで、管理組合では、各部位ごとに基本的な劣化開始時のデータを基に、いつ、どの部分の修繕が必要かという計画を立て、その計画にのっとって、修繕を実施していく必要があります。もちろん築後数年で劣化が目に見えて表れるわけではないので、たとえば外壁補修は10年前後、給水管修繕は15年くらいを目安にするなど、10年、20年先までを見すえた計画を立てなければなりません(細かい項目は別表参照)。
 これが、「長期修繕計画」(以後、「長計」)と呼ばれるもので、適正なマンション運営には欠かせないものです。「長計」の中で大切なものは、名前の通り長期にわたる修繕の実施計画とその際必要になってくる費用の概算です。
 現在、月々支払っている修繕積立金は、このような修繕を実施するときに使われるもので、逆に言うと、修繕積立金が不足していれば、どんなに必要があっても修繕工事を行うことはできません。「長計」は、いざ工事というときに資金不足に陥らないため、また、資金不足のために各戸から一時金を徴収する事態を防ぐため、将来必要なお金を今から少しずつ貯めておく根拠となる重要なものです。
 ただし、一度決めた「長計」は絶対のものではありません。10年後、20年後の工事までを計画するのですから、材料や工法の進歩、工事金額の変化なども十分考えられます。思いの外、劣化が進んでいないこともあり、計画の時期が近付いてきたときに、本当に修繕が必要かということも含め、細かい検討を行いましょう。
 「長計」の作成にあたっては、管理会社にアドバイスを受けながら、自分たちのマンションにあった計画を立てることが大切です。
 築10年、15年などの大規模修繕工事は準備から実施、完了にいたるまで時間もかかり、業務の量も増えます。
 組合役員は通常の維持管理業務があるので、修繕のこともすべて理事会で行おうとすると負担が大きくなります。また、役員の任期内ではおさまらず、途中で交替する事態にもなりかねません。
【RC造】Reinforced concrete 鉄筋コンクリート構造の略 【足場】建物を補修するとき、上下左右に動きやすくするために用いる仮設設備のこと 【囲障(いしょう)】フェンスや生垣などのことで、境界を作るために設ける 【ウォーターハンマー現象】水が流れている状態で急に蛇口やバルブを閉めると、管内に急激な水圧がかかり、管が大きな音を出すこと 【浮き】タイルなど塗重ねした部分に空間ができ、はがれやすくなること。放っておくと、外壁では落下、屋上では漏水の危険性がある    そこで、最近は大規模修繕工事についての“修繕委員会”を作り、
  修繕に関しては委員会のメンバー中心や理事会と委員会が協力して進
  めていく組合も増えてきました。
   委員会については、必要な時期が来たら募集を行いますが、建築や
  経理に詳しい人たちにも参加してもらうと良いでしょう。委員会を設
  置するか否かについては、通常、総会の席で決めます。
覚えておきたい修繕関係基礎用語@


〈主な修繕項目〉
 
工事項目
工事項目
工 事 概 要
修繕周期の目安





塗装工事
 住棟鉄部・鋼製建具塗装
 手摺や玄関扉、防火扉などの発錆・防
 錆・美装を目的とした塗替
4〜6年
 外壁補修
 外壁、共用廊下や階段などの壁石をモ
 ルタルの浮き・きれつ・欠損等補修を
 行った後に塗り替える
8〜13年
防水工事
 屋根防水
 防水層の劣化・漏水事故に対する計画
 的な全面改修工事
10〜15年
 バルコニー・外廊下・
 階段室床防水
 漏水事故に対する防水改修
10〜15年
 目地・建具廻り
 シーリング防水
 PC版目地・外部建具廻りのコーキング
 材を打ち替える防水
7〜10年
そ の 他
 郵便受・掲示板・
 ネーム板等取替
 各部の取替
15〜20年
 集会所・管理事務所内装  塗装・クロス・襖・畳などの改修
7〜10年






給排水設備工事
 屋内外給水管修繕  台所や洗面所など屋内給水管の発錆・
 腐食に対する更生・交換工事や屋外給
 水管の改良・取替
15〜20年
 屋内排水管修繕  台所・洗面所等の排水管の改良・取替
15〜30年
 屋内汚水管修繕  トイレ内の管の改良・取替
30〜36年
 給水計器・ポンプ修繕  受水槽や高架水槽の各種計器やポンプ
 のオーバーホールや取替
オーバーホールは5年ごと
取替は15〜20年  
ガス設備工事
 屋内外ガス管修繕  屋内管・共用本管の改良・取替
屋内は30〜35年
屋外は15〜20年
消防設備工事
 消火ポンプ修繕  消火水槽内ポンプの改良・取替
15〜20年
 屋内消火栓、配管警報
 設備修繕
 消火栓、屋内外消火管、警報機器やそ
 れに伴う配線などの取替
20〜25年
昇降設備工事
 エレベーター修繕  メンテナンス契約に含まれていない部
 分の修繕
17〜25年



電気設備工事
 共用灯・屋外灯設備修繕  共用部分にある灯のバッテリー自動点
 滅器器具の取替
7〜20年
 受電・変電設備修繕  引込開閉器盤及びその関連設備の取替
20〜25年
 動力設備修繕  受電盤・配電盤などの変電設備の取替
15〜30年
テレビ受信設備
 共聴設備・機器ケーブル
 修繕
 テレビの受信アンテナやブースター・
 分配器などの機器及びケーブルの取替
アンテナは5〜10年
他は15〜25年   




土木工事
 道路・道路修繕  敷地内の一般道路・アプローチの舗装
 などの改修
20〜25年
 屋外汚水管・雨水管修繕  敷地内汚水本管・雨水本管の改修
汚水本管 15〜25年
雨水本管 25〜30年
外構工事
 遊戯施設修繕  ブランコなど遊具の塗替や取替
15〜20年
 囲障修繕  パイプ柵やネットフェンスなどの塗替
 や取替
20〜25年

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