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牛写真家/高田 千鶴さん

高田 千鶴さん
牛が好き!牛が好き!
Profile

高田 千鶴さん/牛写真家

■お問い合わせ先
USHI CAMERA 高田千鶴 http://ushi-camera.com/
電話 090-8489-8646


ふたりはなかよし
ふたりはなかよし

 全国の酪農家さんや牛好き仲間と友だちになりたい。牛の魅力をひとりでも多くの方に伝えたい。

 そんな思いを胸に、カメラ片手に全国の牧場を巡り、牛を撮り歩いています。

牛の魅力

 パッと見、大きくて近寄りがたいイメージを持たれがちな牛ですが、よくよく見ると大きくて優しい瞳に、長いまつげ、個性的な牛模様もとてもかわいい。そして大きな体からは想像できない臆病さに、好奇心も持ち合わせて、今で言う“ツンデレ”なところが大好きです。のんびりしていてマイペースな牛たちといると、時間の流れもゆっくりに感じ、人より少し体温の高い牛たちに寄り添うと、心まで温かくなる気がします。

きっかけは農業高校での命との触れあい

 幼少のころに心臓病を患い体の弱かった私は、外で元気に遊ぶよりも、家で静かにぬいぐるみと遊んだりする方が好きでした。物心ついたころから家に犬がいたことも影響してか、とにかく動物が大好きで、小学校の卒業文集には「獣医さんになりたい」と書くほどに。その後、動物がたくさんいるという理由で、大阪府立農芸高校の資源動物科(旧畜産科)に進学。資源動物科にはさまざまな動物がいて、牛の世話をする大家畜部、豚の世話をする中家畜部、小動物のふれあい動物部、乳加工、肉加工、飼料作物部といくつか担当が分かれており、初めにローテーションでひと通り体験してから各自所属を決めます。私にとっては牛の世話が一番大変に思い、けれどその分やりがいがあると感じて、大家畜部を選びました。

 1年生のうちは、堆肥をつくるためにひたすら牛糞をひっくり返すという地味な作業が続きました。曲がりなりにも女子高生が、顔に糞をつけながらみんなで笑っているというのも、大切な仲間との思い出の一つです。2年生になると、それぞれ生まれたての子牛に名前をつけて、1人1頭ずつ世話をします。生まれた子牛はメスなら乳牛としてそのまま高校で育てられますが、子牛を産んでお乳を出すことのできないオスは、必然的に肉牛となるため、生後2カ月足らずでお別れとなり、トラックの荷台に積まれてどこかの肥育牧場へ運ばれていきます。

 私が担当した子牛はオスだったので、世話をしていた52日間の間に、毎日たくさんの写真を撮りました。一緒にいられる期間が決まっていたため「この子が生きていた証しを残したい」そんな思いもありました。2年の秋からは出産間近の牛の世話を担当する係になり、牛の出産に何度も立ち会い、命の素晴らしさを身をもって感じ、より深く、牛を好きになりました。

 そんな高校生活で何より印象的だったのが、先輩から引き継いだナズナ丸という名の和牛との別れです。ナズナ丸はすでに大きかったので、数週間でお肉として売られていくことが決まっていたため、割り切って世話をするつもりではありましたが、初め全然懐いてくれなかったナズナ丸がだんだん心を許してくれて、添い寝をさせてくれるまでになってくると、やはり愛おしさを感じずにはいられません。それでも当然お別れの日はやって来て、授業中にも関わらず、先生が「お前の牛、売られていくぞ」と呼びに来てくださり、私は泣きながら農場へ駆けつけました。

 トラックに乗せられたナズナ丸は今まで聞いたこともないような悲痛な声で鳴いていましたが、私が荷台に足を掛けて頬をなでると、まん丸の瞳で静かに私を見つめ返してくれました。ナズナ丸が不安にならないよう、泣いてはいけないと思いながらも、涙が止まりませんでした。その時のナズナ丸の声や瞳は今でも鮮明に心に残っています。牛の仕事に携わる皆さんは、いつもこんなにつらい思いをして、それでも牛と関わっていようと思えるのは、よほどの覚悟と深い愛情があるからだと思うのです。

牛写真家に

牛に挟まって
牛に挟まって

 高校で牛からたくさんのことを学び、その魅力にどっぷり浸かった私は、卒業後すぐ地元大阪で酪農ヘルパーという職業につきます。いろんな酪農家さんを回り、いろんな話を聞かせていただけるのが楽しかったし、とても勉強になりました。ですが腰を悪くし、背骨にひびが入り、2年で離職。その後カメラ屋でアルバイトをしているときに、牛好きな友人の「牛の写真集が欲しい」との言葉に「私がつくるから待ってて!」と意を決して、本格的に写真を撮るようになり、ちょうど10年たった2009年に「うしのひとりごと(河出書房新社)」という写真本を出版することができました。少しずつカメラマンとしての仕事が増え、酪農雑誌で連載を持たせていただけたことなどで「牛好きなカメラマン」として覚えていただけるようになってきました。酪農の経験が多少なりともあるため、一般の方が立ち入ることのない牛舎や放牧場などに入れていただけたり、牛の話をいろいろ聞かせていただけたり、今は直接酪農業に従事してはいないものの、また少し酪農の世界に関わることができているのをとても幸せに思っています。

写真で伝えたい想い

ひとみ
ひとみ

 「牛が好き!」というと、「え!?なんで?どこが!?」との反応が返ってくることも多いです。けれども牛は、知れば知るほど、触れ合えば触れ合うほど愛らしく思えてくる動物です。牛を知るきっかけになればと、牛のかわいい表情を心がけながら写真を撮り、ブログやSNSなどで配信したり、個展やグループ展などでも発信しています。昨年開催した「牛展3」というアート展では、北海道から沖縄からと、全国からたくさんの牛仲間が見に来てくださいました。酪農家さんや、牛の仕事に携わる方も大好きで、そんな皆さんの魅力も同時に伝えていきたいと思い、現在は酪農雑誌にて「牛とおっちゃん」というタイトルのフォトエッセイを連載しています。

 牛の写真を見た方が、少しでも「牛ってかわいいかも…」と思い、それを機に牧場へ足を運び、牛や乳製品のファンになってくれたらうれしい。また、牛好きな方が、牛の写真に癒やされたり、牛バカな私の話に共感してくれたらうれしい。そして毎日休みなく牛の世話をしてくださっている酪農家の皆さんに、牛ファンがたくさんいるということを伝えられたらと願いながら、これからも全国の牧場を巡っていきたいと思います。



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