西条の酒造りには欠かせない水
春の息吹を感じる3月。散策には最適なシーズンの到来だ。今回は広島市内から車で約1時間の距離にある東広島市の「酒蔵通り」を訪ねた。






レンガ造りの煙突が並ぶ「酒蔵通り」
 灘・伏見と並ぶ三大名醸地として名高い「西条」(意外と知らない人が多いのでは?)。酒造りの季節になると、ニョキニョキ立ったレンガづくりの煙突から白い湯気がもうもうと吐き出される。酒造りには3つの必要条件がある。「水」「米」「杜氏」。西条で酒づくりが盛んになったのは、何といっても「水」の存在が大きい。標高240mの龍王山から地下水脈を流れ、何十年もの時間をかけて染み出る「井戸水」は、「温暖な土地では難しい」とされていた広島の酒づくりの歴史を変えた。現在、西条駅前の「酒蔵通り」には伝統ある8銘柄の造り酒屋が軒を連ねている。

酒蔵通りを歩く。ほんのり酒の香りが…


 目覚ましい発展を続ける東広島市。玄関口である西条駅前も再開発が進んでいる。しかし、一歩路地を入れば、白壁(なまこ壁)に挟まれた風情のある町並みに出会える。背の高い白壁に囲まれた小道はちょっとした迷路のようだ。歩いていると、ほのかに酒の香りが漂う。
 「日本酒」の量販化で安い酒が世の中に大量に出回り、「本物の酒づくり」にこだわる各社は苦戦を強いられているという。「本物の日本酒」を造ろうとするとやはりそれなりのコストがかかり、大量に生産するのは難しい。しかし杜氏の魂が込められた「本物の酒」は涙が出るほど、うまい。そんな「本物の日本酒の魅力を知ってもらおう」と酒造業者10社で組織する「西条酒造組合」や市民有志らが始めたのが毎年秋の恒例行事「酒まつり」だ。昨年で14年目を迎え、動員数は24万人を超えた。

 最近、酒蔵通りに、古い建物を改造した味わいのある店が増え、それを目当てにやってくる観光客も多くなっている。先駆けとなったのは賀茂輝酒造内にある「円座」。
かつての県醸造試験場を改装してつくられた「酒泉館」

明治時代の精米所を家族で改造。酒造りの道具を改造したカウンターやいすを配置した。手作りの雑貨や和服をリメイクした洋服などを展示。喫茶コーナーでは酒の仕込み水で入れる「コーヒー」や吟醸酒をかけていただく「シフォンケーキ」などが味わえる。店主は「ぬくもりのあるもの、心が入ったものが詰まった空間」と評する。むきだしの土の壁、年季の入った柱…。肩の力がすうっと抜ける。いつまでも居座ってしまいたい気持ちになってしまう。酒造りに使われていた場所で、人と人とのふれあいを通して「日本酒文化」を知り、肌で感じることができる。いつのまにか日本酒を見る目が変わっている自分を発見できるはずだ。

 とにかく、今の西条は市民レベルでの個性的な町づくりが印象的。人のぬくもりが伝わる町づくりが魅力の西条。ある晴れた昼下がり、ぶらりと歩いてみては。

雑貨と喫茶 あ・うん

ギャラリー鳳仙花
オーナーの夢が詰まったレトロな空間。店名の由来は「自分の選んだ好きなモノや空間をお客さんに感じてもらって、『あ・うん』の呼吸が生まれればいいな」という思いから。西条の水で入れた「たんぽぽコーヒー」や、昔懐かしい「ラムネ」などの喫茶メニューを楽しめる。
所/東広島市西条朝日町1−32
営/11:00〜19:00ごろ
定/毎週火曜日と毎月第一日・月・火曜日
電/082−423−2729
昨年オープンしたばかりの陶器・和小物・山野草の店。民家を改装した店内の品物はすべて手作り。喫茶コーナーもあり、ゆったりとした時間を過ごせる。ギャラリーでは不定期に展示会を行っている。
所/東広島市西条吉行1963
営/10:00〜18:00
定/月曜日(祝日の場合は翌火曜が休み)
電/082−422−0866


お酒喫茶 酒泉館
登耀館 円座
大正ロマン漂う洋館で、賀茂泉の酒(グラス1杯100円〜)を飲み比べできる「お酒ギャラリー」。おつまみとのセットもあり。酒まんじゅうやコーヒーなど喫茶メニューも。藍染体験ができる藍泉館が隣接している(要予約)。
所/東広島市西条上市町2−4
営/10:00〜17:00
営業日/土・日曜日、毎月4日・10日
電/082−423−2021


明治時代に建てられた精米所を家族で改造。酒造りの道具を随所に配置した店内は「手作り」の温かさが漂う。落ち着いた雰囲気の中で喫茶を楽しめる「円座」(隣接する建物で酒の試飲・販売も)。財満進氏の陶芸作品を常設展示するギャラリー「登耀館」。「円座」の人気メニューは吟醸酒をかけていただく「シフォンケーキ」。
所/東広島市西条西本町11−3
営/10:30〜17:00
定/月曜日
電/082−423−8603


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