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341号 注目の人 女優/藤田 朋子さん

いくつになっても今が旬。
藤田 朋子/女優
Profile

藤田 朋子/女優
1965年東京都世田谷区出身。玉川大学文学部外国語学科卒。87年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』で初舞台、88年、NHK連続テレビ小説『ノンちゃんの夢』のヒロイン役でテレビデビュー。以降、ドラマ、舞台、映画を中心に幅広く活動中。広島を舞台にした映画『こいのわ 婚活クルージング』では結婚相談所を営みながら婚活イベントをボランティアで手伝う宏美役を好演(11月11日広島先行、18日より角川シネマ新宿ほか全国順次ロードショー)。



積極的で真面目な子ども時代

東京都世田谷区の自宅で。父撮影

東京都世田谷区の自宅で。父撮影

 小さいころから歌ったり踊ったりするのが大好きで、宴会場の10センチくらいの舞台や、少しでも高いところがあると、そこに乗りたがるような子どもだったそうです。当時は弟と両親、祖父母、父の一番下の弟であるおじさんと一緒に住んでいました。今思えば大家族ですね。

 父は機械が好きでカメラや8ミリなどいろいろ持っていたので、写真や録音テープがたくさん残っています。カラオケセットもあって、親戚一同が集まるとみんなの前で歌ったり。記憶には残っていないのですが、後から写真やテープを見て、「こういう子どもだったんだなぁ」と思いました。

 両親は自由に好きなことをさせてくれましたが、根が真面目な性格なので(笑)、学校からの帰宅時間はもちろん守りましたし、寄り道もしませんでした。友達が学校帰りに文房具屋さんに寄ると言っても外で待っていたり、みんなが買い食いをしていても、それを見ているような子でした。そういう小さなルールから外れるところから青春って始まるじゃないですか。でも、そういうことは何もなかったですね。

 学校では、放送委員や集会委員をやっていました。舞台上から「校庭に集まってください」「一列に並んでください」など言う係で、やはり高い台に乗ることが好きでした(笑)。

「ゴダイゴ」が開いた芸能界への扉

高校2年生のころ。東京都の烏山区民会館にて。奈良橋陽子さん主宰の英語塾 MLS(Model Language Studio) Big Production公演 英語ミュージカル『OLIVER!』(チャールズ・ディケンズ原作)のカーテンコールの場面。正面中央がオリバー少年役の本人

高校2年生のころ。東京都の烏山区民会館にて。奈良橋陽子さん主宰の英語塾 MLS(Model Language Studio) Big Production公演 英語ミュージカル『OLIVER!』(チャールズ・ディケンズ原作)のカーテンコールの場面。正面中央がオリバー少年役の本人

 中学生になると、当時大ヒットしていたロックバンド「ゴダイゴ」のボーカル・タケカワユキヒデさんの大ファンになりました。それでゴダイゴに近づくために、ありとあらゆることを考えました。まずヒット曲『ガンダーラ』の作詞家である奈良橋陽子さんに近づこうと画策しました。

 当時、奈良橋さんは英語塾をやっていたので、その塾に通えば本人に会えるかもしれない。そしていずれはタケカワユキヒデさんに会えるかも…。そういう浅はかな考えで(笑)、塾に通い始めました。

 しばらくすると、その塾の発表会で奈良橋さんに会うことができ、それまで書きためてきた英語の訳詩を読んでもらおうとノートを渡しました。今思えば「何考えてるのこの子?」という感じですが、とにかく見てもらいたい一心でした。そのとき、奈良橋さんから「keep on writing(書き続けなさい)」と言っていただき、とてもうれしかったのをよく覚えています。

 高校は玉川学園に進学したのですが、英語塾の先生が「玉川学園の英語劇部は活動が盛んだからきっと面白いと思うよ」と部活を勧めてくださったのです。それで英語劇部に入部。中学校でも演劇部に入っていましたが、さらに本格的に演劇に取り組むようになりました。

 当時、部活の先輩の中に奈良橋さんが主宰するMP(Model Production、東京学生英語劇連盟。現在奈良橋氏は総監督をつとめている)の公演に出ている方がいて、後輩たちにチケットを売りに来ました。

 その公演を見に行ったとき、会場でもらったチラシに「高校生募集」と大きく書いてあったのです。

 それでオーディションを受けに行ってみると、そのときも奈良橋さんがいらっしゃって、その作品で主役をやれることになりました。学校の演劇部という小さなサークルの中で、「藤田さんは声が大きいし、歌がうまいからちょっとやって」と言われて役につくのではなく、プロがオーディションで私を選んでくれた。この経験は大きな自信になりました。

 その後、大学でも英語劇を続けました。中学時代の英語塾から始まった奈良橋さんとの出会いがなければ、私は今ごろ芸能界にいないでしょう。

『レ・ミゼラブル』で舞台デビュー

21歳のころ、『レ・ミゼラブル』合格のすぐ後。知人がプロモーションビデオを撮ってくれた際のショット

21歳のころ、『レ・ミゼラブル』合格のすぐ後。知人がプロモーションビデオを撮ってくれた際のショット

 大学3年のとき、サークルの先輩が「今度、東宝が一般公募で『レ・ミゼラブル』のオーディションをするんだって。しかも踊りがなくて歌だけだから、君も受けた方がいいよ」と勧めてくれました。

 それで『レ・ミゼラブル』の日本初公演のオーディションを受け、合格。そこには、シャンソン歌手、オペラ歌手、ヨーデル歌手、童謡歌手…。ジャンルの違う一流の歌い手が集結していました。発声法は違うけど、みんなうまい。それぞれが個性的で、粒立って歌うから迫力が違います。私はそういう人たちの中で、「どのジャンルでもない、ただ音程が合っている、声の大きい女の子」だったのです。

 当時の私は、歌のレッスンをほぼ受けていませんでした。近所にイタリア歌曲をやっている先生がいらっしゃったので、そこに通ったことがありましたが、「自分にはちょっと合ってないな」と思って、1年もしないうちに辞めました。でも、結局はそれが良かったのだと思います。イタリア歌曲をやっていたら、レ・ミゼには合格しなかったかもしれない(笑)。

プラスのスイッチ発見!

 女優業と家庭の両立で大変なことといえば、時間が不規則なことでしょうね。ウチは役者とミュージシャン(夫はアコーディオン奏者・桑山哲也氏)という夫婦ですが、要するに共働きということです。お互い規則正しく終わる仕事ではないので、その中でお互いの時間を把握しながら主婦業をやるのが大変なときもあります。

 つい最近のことでいうと、すごく忙しいさなかにダンナさんが家でパーティーをすると言い出しました。こんな面倒なことってないですよね。イヤではないけれど、「何から手をつければいいのだろう」と思うと、頭の中が爆発しそうになります。

 ところが最近、そういうことが楽しくなる「スイッチ」が私の中で発見されたのです。うまく説明ができないのですが、そのスイッチが入ると、なんだかその大変さが楽しくなってしまう。

 今回もパーティーに向けて「ああしよう、こうしよう」と、気分がどんどん高まっていきました。「あっ、かわいい紙皿!これがあれば気分がアガる〜」と、前日はデパ地下であれこれと買い物してしまいました。

 当日は7時半ごろ家に帰りましたが、お料理も10品くらい出せて大成功。最初に聞いたときにはあんなに面倒に感じたのに、われながら「なかなかよくできたわ♪」と思えるパーティーになりました。

 物事をプラスに考えられるスイッチがみつかってから、ハッピーが増えたと思います。

現場で本領発揮の「おせっかい力」

映画『こいのわ 婚活クルージング』より

映画『こいのわ 婚活クルージング』より

 最近、芝居の現場に呼ばれる理由が「おせっかい役」が多いということに気づきました(笑)。私を現場に入れておくと、バックヤードがなんとなくいい感じになるらしいのです。

 たとえば、映画の撮影って待ち時間がとっても長いのです。私たちは慣れていますが、エキストラの皆さんは、あまりにも現場で待たされることにまず驚かれます。

 11月に公開される映画『こいのわ 婚活クルージング』では、最後に婚活クルージング参加者全員が砂浜に集まるシーンがあるのですが、正味5分くらいのシーンを丸一日かけて撮りました。エキストラの皆さんは炎天下の砂浜で延々と待たされて、しかもほとんど映らない。その上、自分たちがなぜ待たされているのかも分からない。それはモチベーションも下がりますよね。表情も暗くなる。

 そこで私は、メガホンを持ち「え〜、皆さん。皆さんは、どうしても結婚がしたい人たちです。ですから、めでたくカップルになった人は、ちょっと寄り添ったり会話したりしても平気ですよ〜」と具体的に説明したのです。そうすると皆さんびっくりするくらい演じてくれました。どう動いていいのかが分かると表情がイキイキしてくるのです。

 映画でもドラマでも、作品というのは全員が作品の一部。だから、皆がきちんと演じていないとダメなのです。私は作品を良くしたいから、おせっかいかもしれないけど言わずにはいられませんでした。小学生のときから大勢の前で指示を出すことには慣れていますしね(笑)。

 『こいのわ〜』は誰が見てもちょっと自分に重ねられたり、勇気をもらえたり、とにかく笑って泣ける作品です。

 主演の風間杜夫さんは玉川学園の先輩です。玉川学園は「歌に始まり、歌に終わる」と言われるほど音楽が学校生活の一部にとけこんでいます。だから、撮影中も昔の歌で一緒に盛り上がりました。

 映画では誰よりも大きな声で広島カープの応援歌を歌っていますので、ぜひ観に来てくださいね。

常に「旬の素材」でありたい

藤田 朋子さん

 最近、演技のワークショップによく行きます。ゼッケンをつけてアマチュアの方たちと一緒に演技するのです。「お客さんも見ていないのに、お金まで払って全力で演技している自分って何だろう?」って思いますが、演じることが楽しくて仕方ない。改めて「やっぱり芝居が好きなんだ!」と思う瞬間です。

 これはずっと前から言っていることですが、私はいつでも「旬のネタ」でありたい。食べてみたらおいしいだろうな、という素材。いくつになっても、過去じゃなくて「今がいちばん旬」でいたいと思っています。
(配給のKADOKAWA本社ビル(東京都千代田区)にて取材)


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