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160号 注目の人 女優/桃井 かおりさん

「100才まで生きたい。だから、まだ半分生きなくちゃ(笑)」
桃井 かおり/女優
Profile

桃井 かおり/女優
東京生まれ。
12才で英国ロイヤルバレエアカデミー留学。文学座養成所を経て1971年映画デビュー。映画・TV・CMなどで活躍、多数の女優賞に輝く。
プロデューサー、監督、デザイナーと活躍の場を拡げ、海外の仕事も多い。15枚のアルバムをリリースした歌手でもあり定期的に日野皓正・山下洋輔氏などとジョイントライブを行う。エッセイの著書も多く"まどわく"が新刊文庫発売。「桃井かおりとイッセー尾形の二人芝居」追加公演が9/26~30(東京クエストホール)10月ロンドン公演。


女優にならなかったら、犯罪者だったかも(笑)

 7月に、10年ほど前のエッセイをリニューアルした「まどわく」(集英社be文庫)という本を出版しました。あのころの方が今よりすごく真面目に考えていて、読み返してみると自分でもなかなか面白かったですね。「1日おいたカレーの旨さです」って後書きには書いたんだっけ(笑)。

 今は、週1回の連載でも追われているという感じがするけど、そのころは3本ぐらい連載していても全然苦じゃなかった。書くことが好きだったんですね。  ものを書く楽しさを覚えたのは、幼稚園のころかしら。海外に行ってなかなか会えない父と交換日記をしていたんです。その日記を通して、父と会話していた。そんな思い出があるんです。


都ホテル(東京都港区白金台)

 今回の本は、役者をやってるいい加減な自分と、生真面目な自分との中間ぐらいの位置。以前は書くことで、自分の中のバランスを取っていたんですね。今は書かなくても、バランスが取れるようになったかな。 いろんな経験をしてくると、嫌だと思っていたことも、本当は嫌じゃないんじゃないかと気づいたり、苦手なことが苦手じゃなくなったり、似合わないと思っていた色がすごく似合う年ごろになったりする。そうすると、何ごともあんまり恐くなくなってくるよね。見栄を張らなくなりました。人に「どうこう思われたい」とかいうことも考えなくなったし、そんなことどうでもいいって感じになって。例えば、人に見せる家じゃなくて、自分が心地よく暮らせる家であればいいと思うし。本当は、桃井さんらしいって言われると 1番困るの。桃井らしいって何?って逆に聞きたくなる。私は、監督や演出家のイメージに合わせて演じているだけなんだから。

 私が女優になったのは憧れとはちがって、女優にならないと何かが切実に狂っていく気がしたから。多分ずっとウソをついて生きなきゃいけないだろうなって。私は特攻隊みたいな性格をしているので、この仕事でなければ犯罪者になっていたかも(笑)。体育会系のわりには理屈が多いし。役者はちょうど合っていたんでしょうね。合っていたから続けている。「居心地がいいから同じ家に住んでいる」っていうのに似ています。

役者としては小綺麗より野性味を演じたい

 時々、「美しく生きる秘訣は?」なんて聞かれるけど、私は美しさにはあまりこだわらない。 だって、もともと美人ってタイプじゃないし、それを「個性」という名でスタイリングして、ヒロインの座を勝ち得たわけだから。自分では今の方が顔だちがすっきりしてきれいだと思う。これは年齢とか年月がもたらしたものだと思うんです。化粧だって、化粧水ぐらいしかつけていません。SK-?の化粧水(笑)。あのコマーシャルは長くやっているけど、できれば70才くらいまで続けたいですね。化粧水はそのくらいまで使うでしょ。年をとっても小綺麗でいたい。それなりの美意識はあります。でも、厚化粧はしたくない。メイクをした時と落とした時の落差が激しいと、耐えられないような気がするんです。ウソをついてるような感じ。汗をかいてお化粧が崩れていくのは、なんだか絶望的な感じがして。

 ただ、役者としては、映画の「ベニスに死す」で醜い中年男が美少年に厚化粧をして会いに行く…ああいう役はやってみたい。厚化粧したデブな女が、若い男を見て「あんな男と愛し合いたい」と思いながら、ダレッと死んでいく、みたいな。浅ましかったり、おぞましかったりする、野性の人々を演じてみたい。小綺麗でいたいというのはあくまで個人的なことで、役者としては全然興味がないですね。

ただ今、演技の改革中


 この夏もイッセー尾形さんと「二人芝居」を演じています。これは、台本から全部自分たちで作っているので、ギリギリまで台本ができなくて、本番はすごく勇気がいるんです。そんなお芝居をしていると、今までやってきたことは何の役にも立たない。1から全部やり直し。だから、今、これまでのパターンから演技を改革しようとしているんです。表面だけ変えるのではなく、表現の根っこから改造中って感じですね。

 芝居に対する考え方もだんだん変わってきました。普通は、まず台本をもらったらそれを理解して覚えて、言い方を訓練する。芝居はそういうものだと思っているでしょう。私も表現するというのはそういう仕事だと思ってきました。でも、最近は”自分の中にあるものを表現する“そういう考え方もありだなと思うようになってきたんです。

 シンガーソングライターのように、自分で作って自分で演じる。自分の中にある可能性を試してみるっていうのかな。わざと高い塀の中に自分を追いつめて、バッタバッタとなぎ倒してるって感じ(笑)。


「桃井かおりとイッセ-尾形の二人芝居」
本番舞台風景(原宿クエストホ-ル)

 例えば、演出家に「バイオリン弾いてみて」と言われたら、本当は弾けなくても、「はい、やります」とやってみる。「この役はオペラ歌手にしよう。歌ってみて」って言われたら、突然「♪あ~る晴れた日」なんて歌い出してみたり。そうやっているうちに、1オクターブ高い声が出せるようになったり、できなかったことがどんどんできるようになってしまう。芝居以外にジャズを歌ったりしているのも、歌が好きだからじゃなくて、苦手だからやっているって感じで、もう必死なの。

 でも、おかげ様で「二人芝居」もご好評をいただき、9月の追加公演、10月にはロンドン公演、その後ミュンヘン公演も決まっています。話がくれば海外公演もどんどんやってみたい。考えるよりやった方が勝ちだと思うし、やらないで後悔するのが1番劣っていることだと思うから。

長生きして、何でもやってみたい

 4年ほど前までは、1人でブラッとインドに行ったり、旅が大好きだったけど、最近は映画や仕事で海外に行くことが多くなりました。撮影の現場では言葉の壁も全然感じない。かえって、私がよけいなことを言わない分、スムーズに仕事が運ぶみたい(笑)。イタリアで仕事をした時も、向こうのスタッフとずっとしゃべっていたから、みんな私がイタリア語を話せると思いこんでいたんです。でも、本当は全然話せない。私の場合、言葉よりも念力で通じちゃう(笑)。


エッセイ「まどわく」
(集英社be文庫)
定価(本体)552円

 多分、言葉が通じる日本人どうしの方が1番心が通じないのかもしれない。言葉だけを聞こうとしないで、相手を感じようとすれば、もっとわかりあえるのに。言葉に頼ると、見えない壁がいっぱいできてしまうよね。だから、私はいつも本音で話すのが好き。言葉にフリルは必要ない。意味なくしゃべるのってわからないんです。それぐらいなら、歌おうよ、踊ろうよって感じかな。

 このごろ、私は90才か100才まで長生きするゾ、と思っているんです。そう思うようになったら、全然焦らなくなってきちゃった。だって、まだ半分生きなきゃいけないわけでしょう?これで止まるわけにはいかないよね。でも、どんなに長生きしても、しわの数が増えて、体力がなくなるだけじゃつまらない。それに代わる何かを身につけていきたいじゃない。

  私は家も別荘もあるし、子どももいないし、私よりも生活力のある親なので、金銭的には面倒をみなくてもいい。すごく恵まれているわけだから、何かほかの才能を芽生えさせなくちゃ、という気がするのね。新しいものをプラスしてどんどん背丈を伸ばしていかないと、止まったままになっちゃうわけ。


男はつらいよ・翔んでる寅次郎
共演者・スタッフ集合写真
監督・山田洋次 制作/1979年

 最近、少しずつフランス語を覚えているので、50才ぐらいになったら、本格的にフランス語を習ってみたい。それと、来年あたり子どもでも産んでみっか(笑)、なんて気にもなってる。子どもを連れてフランスに留学なんていうのもいいよね。

 100才まで生きたら、きっと今までとは世の中ガラッと変わっているんだろうな。だから、今までの既成概念にとらわれないで、考え方もどんどん変えていかないと。

 なんだかこのごろ、テレビなんかに出てる人たちがすごく古いなって感じてしまう。逆に、原節子さんや昔のヤクザ映画の方が数段モダンな気がするの。だからこそ、それ以上にどう新しいのかというものがないと演じる甲斐がないじゃない。これから、私が演じたい役?私が1番活気づいて演じられる人間かな。それはまだわからないけど、もしかしたら自分自身の中に存在しているのかもしれない。そんな予感がするんだよね。






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