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153号 注目の人 女優/高木 美保さん

「自然のままに生きれば、すべてがうまくいくんです」
高木 美保/女優
Profile

高木 美保/女優
1962年7月29日、東京生まれ。
映画『Wの悲劇』でデビュー後、ドラマ『華の嵐』の主役をはじめ、NHK大河ドラマなどに出演。またバラエティー番組にも挑戦し、お茶の間の人気者となる。
1998年11月、自然と共にある生活を求めて、栃木県那須高原に住まいを移し、農業にも取り組む。
現在は、芸能生活のみならず、講演や執筆業など幅広い活動を展開。
著書に、那須での暮らしぶりをまとめたエッセイ集『木立のなかに引っ越しました』(幻冬舎)がある。


食べることは生命力をいただくこと


採れたての野菜から生命力を
(C)Miho Takagi

 4年前、東京から栃木県の那須高原に移り住みました。自然の中で暮らしたいと思い立ち、全国の土地を探しまわっていたときに、この雑木林に囲まれた別荘地を訪れ、何だかとても懐かしい気持ちになったんです。

 自然の中で生活していると、毎日が発見ばかりで面白いですね。温泉に入っていて雷に感電したり、那須おろしの大風にわが家が吹き飛ばされそうになったり。自然の力の前では、人間は小さなものだし、生かされている命なんだなと実感しています。

 自給自足を目標に、有機農業にも挑戦していますが、ちょっと植え付けが遅れると雨で収穫が少なくなったり、まだまだ自然の読みが浅いなと思うことも多いです。でも、自分で作った野菜は本当においしい!昨年から、たんぼも100坪ほど借りてお米も作っていますが、これがまた甘くておいしいお米なんです。もちろん田植えも稲刈もすべて手作業。田植えの後は3日間ほど筋肉痛で寝込んでしまったんですが…(笑)。

 毎日、採れたての野菜を食べていると、体の中に生命力が入ってくるのがわかるんですよ。これは一番驚きました。野菜を作るにも化学肥料を大量に与えると、無理やり早く育てることになるんですが、農薬や除草薬も使わず、最低限の肥料だけ与えていると、野菜が育ちたいペースで育ってくれる。その分、成長は遅いけれど、生命力はものすごく強くなるんです。結局、食べるというのは、生命力をいただくことなんだなと思います。

 野菜が生きようとする力をちょっとサポートする、それが一番いいんだと思います。野菜の力を信じて甘やかさない。何だか子育てのようですね(笑)。

すべてを捨てて田舎暮らしを決心

 那須に来てから、本来の自分にやっと戻れたという安心感に満たされています。

 10年前、私はあまりにも多忙なスケジュールの中で、体力的にも気力的にも限界を感じていました。私としては、監督やスタッフとディスカッションをしなが一つ一つの仕事をじっくり作りあげていきたいのに、芸能界ではそれがむずかしい。決められた予算と時間の枠の中で、とにかく撮り終えるのが先決。その中で流されていく恐さと自分が自分でなくなってしまう不安。このまま枯れてしまうより、自分に正直に生きたい。そう思ったんです。

 そこで、よけいなものは捨てて、田舎暮らしをしようと決心をしました。周りの人には仕事が来なくなるとか、いろいろ反対されました。でも、私は那須に行けば幸せになれる、そんな予感があったんです。

 他の人から見ると、すごく勇気のいることなのかもしれないけど、むしろ執着することは自分を苦しめるだけ。自分の心に従って生きていれば必ずうまくいく、大丈夫なんだってことがよくわかりました。今は、一番好きなことをして、最高に贅沢な毎日を送っています

たまたま女優になってはみたものの…


流行からも普遍性の価値を追求したい
photo Thoru Ibuki (C)WENDY

 私が女優としてデビューしたのは21才のとき。でも、もともと女優になりたいと思っていたわけではないんです。小さいころから憧れていたのは看護婦さんでした。一家全員医者という父方の親戚が、すぐ隣に住んでいたので、医者や看護婦というのはすごく身近な存在だったんですよ。父には、恩給をもらえるから先生になりなさいと言われ続けて。ずい分夢のない教育ですよね(笑)。安定思考のわりには、父も自営業だし、周りを見てもサラリーマンの家庭はなく、気がついたら、一番ギャンブル性の強い仕事についていたわけで…(笑)。

 大学付属の中学からエスカレート式に大学に入ったものの、つまらなくなって中退。たまたま女優志願の友人にオーディションに誘われ、ついでに受けたら合格してしまったというのが、女優業の始まりなんです。

 その友人は、すぐに稼業を継ぐために辞めてしまい、一人残されてしまった私。最初は出演するより、制作する側になりたかったし女優には向かないとずっと思っていました。「何でこのセリフを言わなきゃなんないの」なんて、私ぐらい監督とケンカした人もいないでしょうね。

 30才を過ぎたころから演じるのに疲れてしまって、もう女優は辞めようと。もっと楽に稼ぐんだなんて。とんでもないヤツですよね私って(笑)。でも、いつも周りの方々の絶大なる理解のもとに好きな方向に進ませてもらい、本当に感謝しないといけないなと思っています。

時代性と普遍性が私のテーマ

 女優になって、いつも父から言われていたのは、一人の人間として成立しなければ、女優になる資格はないということ。だから、忙しくても月に五冊は本を読むこと、新聞やニュースには必ず目を通すことは、常に自分に課していました。いつ何があってもチャンスを生かせるように、心がけてきたことが結果的によかったのかもしれません

 一言で言うと、時代性と普遍性。それがいつも私の心の中にあるんです。時代の中で流行しているものも、一つの文化として評価したうえで、永遠に変わらない普遍的な価値を追求していきたいと思っています。

文学の世界で疑似恋愛を経験


photo Thoru Ibuki
(C)WENDY

 本を読むのは、子どものころから大好きですが一番影響を受けたのは五木寛之さんの「朱鷺の墓」ですね。中学のときに、感想文を書く宿題があり、どうせなら長いものを読もうと本屋さんで探していて、装丁が一番目立っていたのが、この本だったんです。そのころは作家の名前もよく知らず、ゴキカンユキって読むのかなって(笑)。でも、読み始めたらものすごく面白くて、恋愛小説なのに、人間の欲や汚い面もきっちり書いてある。それがすごく新鮮に感じました。読んでいる中で、心の底から怒ったり、泣いたり笑ったり。疑似大恋愛を経験して、本当に人生ってすごいなと思いました。この本に出会わなければ、世の中のウソやゴマカシを見て見ぬふりしかできない人間になってしまっていたかもしれません。

 私の場合、本を読むのも感情移入が激しいので、その面では女優に向いていたのかもしれません。でも、逆に自分が演じる側になってみると、台本の内容が浅く感じたり、何かもの足りないと思ってしまったんです。映像より文学の世界の方がスケールも奥行も自由に想像できますから。今は、テレビドラマはもっぱら見て楽しんでいます。

 多分、私は自分の言葉で、感じたことを伝える方が向いているのかもしれません。昨年から、講演の仕事が増え、全国を回ることが多くなりましたが、人に何かを伝えるのは楽しいですね

地球全体を考えた農業が健康を守る


有機農業に挑戦中
(C)Miho Takagi

 今、私が1番伝えたいのは、自然と人と農業のつながり。人がどう生きて、どういう農業をすれば地球を守ることができるのか。世界中で、農薬や化学肥料などの農法で、土と水が汚されています。生命よりも経済性を優先する人間の欲が、自然の生態系をも狂わせている。もっと、地球全体を考えた農業を国が奨励してほしいと思いますね。

 もし、農薬も使わず正しく育てられた食物を旬に合わせて食べていたら、体も健康になるし、医療費だって削減される。国の社会保障も安泰になるし、大きな視点で考えれば、すべてつじつまが合うんです。そのためには見た目がよくて安い野菜より、本当に地球にも体にもいい野菜を買うように、消費者も変わっていく必要があると思います

自分が好きになれれば生き方も変わる


六本木の公園にて、散歩中の犬と
photo Thoru Ibuki (C)WENDY

 最近は、キレやすい子どもが多くなり、自然との触合いが大事だとよく言われますが、子どもよりもまず親が変わらなければいけないと思います。私は、仕事よりもお金よりも、自分が大好きっていう大人が増えれば、子どもは健全に育つと思うし、日本は変わると思います。今の日本人はあまりにも自分を疑って生きているみたい。私はいつも自分で自分を誉めてます。「私ってなんてすばらしいの」って(笑)。

 もっと自然に生きること。心配するとその通りになるし、大丈夫って思えば大丈夫になる。無計算、無防備が一番楽(笑)。自然のままに生きれば、自ずとうまくいく。人間って本当はそんなふうにできているものなんでしょうね



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