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アムステルダム Complex 50(改修前) |
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| アムステルダム Complex 50(改修後) |
海外に行くと、新築工事と見間違うぐらい、美しく快適に再生された団地を見ることができます。その一例としてオランダ、アムステルダム市郊外に立地するコンプレックス50(Complex 50)団地の再生について紹介します。この団地は1958年に竣工したもので350戸の住戸があり、2つの住宅協会が所有していましたが、老朽化が進んだため、全面的に改修されました。設計を担当したのは、ロッテルダムに所在するファン・シャーゲン建築設計事務所の建築家、クラース・ヴァーハイド氏です。この事務所はオランダ各地で団地再生を手がけています。
既存の建物は階段室が暗く、防犯性も低かったので、階段室の外部に面した壁を撤去しサッシに取り替えて、階段室の内部を明るくしています。住戸内部を広くするため既存のバルコニーを室内に変更して、建物外部にバルコニーを新たに設置することも行っています。建物の断熱性能を向上するため、外壁やサッシは全面的に改修が行われています。既存の壁に被せるように新しいファサードを設けて断熱改修を行ったため、建物の奥行きが45センチほど大きくなっています。
街づくりと団地再生の連携
団地再生にあたっては、団地周辺との関係を改善することも重視されました。団地の敷地を通り抜けて、団地東側にある公園から西側にある学校まで、自由に行けるようにして、地域の人の流れを円滑にし、街の再生に寄与することを目指しています。そのため団地住棟の1階と2階部分を2階層分の高さの大きな吹き抜け(ピロティ)に改造し、敷地を横断する広々とした歩行者動線を創り出しています。この大きなピロティができたおかげで、敷地の端から端まで見通すことができ、建物が並行して並んだ閉鎖的な景観が、伸びやかな広々としたものに生まれ変わりました。
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| 既存建物の1階部分 |
増築されたバルコニー |
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| アムステルダム Complex 50 吹き抜け(ピロティ)部分(改修後) |
多様なタイプ、面積の住戸を設置
住宅の面積や平面タイプについては、同じ団地の中に高齢者、若者、大家族など多様な世帯が住めるように変更されています。低層部の1階、2階には子どもが多くいる大家族が住めるように、2階建てのメゾネットに改修されました。1住戸の面積は140平方メートルと十分広く計画されています。オランダの伝統的住宅のように、1階の住戸はすべて外部に直接面した玄関を持つように造り替えられました。1階には台所や食堂が配置されています。そうすることで1階に人がいる時間が長くなり、住宅の中から外を見る視線が確保されて、団地の防犯性が向上したと言われています。
ピロティの上にある3~5階には高齢者や、初めて世帯を持つ若者が多額の家賃を負担しないでも住めるように、小規模住戸が配置されました。各住戸には、新たに設置されたエレベーターと、同じく新たに設置された外廊下を経由してアクセスします。
既存の構造体にどれぐらいの荷重を追加負担させることができるか、設計事務所と建設会社が共同で確認した結果、屋上に2階分増築して、6階、7階を設けることになりました。屋根スラブの上に鉄骨の桁を180メートルの長さで設置し、その上部に伝統的な木造構法によって25戸の住宅を増築しています。住戸面積は120平方メートルで、メゾネットとなっています。鉄骨の桁を設けることにより、5階から下にある既存建物の構造壁とは違った自由な位置に、ペントハウスの戸境壁を設けることができています。なお屋上部分とペントハウスの間にできた床下空間は70センチの高さがあり、配管スペースとして使用されています。
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| 改修工事前の団地の配置 |
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| 改修工事後の団地の配置 |
試行錯誤の再生工事
団地再生工事において、最も苦労したのは、既存の建物に2階層分の吹き抜け(ピロティ)を設けることでした。この部分には、元々、1階層の高さの通路があったのですが、間口も小さなものでした。2階層分の吹き抜けを作るためには、3階の床レベルにある梁を補強して、上部の荷重を受けなければなりません。設計当初は、鉄骨の梁を設けようと考えられましたが、既存の建物の中に大きな梁を搬入することが難しく、現場打ちのコンクリートで梁を設けることに変更しています。コンクリートを打設した後、4週間が経過して、十分な強度が得られることを確認してから、既存の構造体が撤去されました。
この団地再生を計画した建築家のクラース・ヴァーハイド氏は、「どの団地でもこのような再生が可能なわけではない。この団地では構造体(戸境壁)の間隔が、再生に適した寸法であったことが、うまくいった原因である」と言っています。構造体として十分な強度を有し、また新しい住戸平面を計画するには、構造体の間隔などに一定の条件があり、どの団地でも再生がうまくいくとは限らないのです。
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| アムステルダム Complex 50 吹き抜け(ピロティ)部分断面図(改修後) |
期待される日本の団地再生
日本でも今後、団地再生が本格化すると予想されます。既にUR都市機構は、日本で団地再生を実施するのに必要な技術開発を行うため、「ひばりが丘団地ストック再生実証実験」に取り組んでいます。そこでは(1)エレベーターや外廊下の設置、(2)メゾネット化、(3)住戸の水平二戸一(にこいち)、(4)1階住戸の低床化や施設化など、多種多様な実験が予定されています。また2007年12月、UR都市機構は、管理する全国の団地に対して、今後の再編・再生方針を示しました。日本においても、団地再生が居住者や地域社会に受け入れられるためには、住戸の居住性能の改善だけではなく、新築工事を上回る高い水準のデザインであることが必要ではないでしょうか。ここでご紹介したオランダの事例ぐらいに、改修後の団地は、当初のイメージを一新して、豊かな表情を作り出すことが望まれます。新築工事より魅力あるリニューアルの手法を開発して、持続性ある居住環境を実現していきたいと思います。
図版、写真は、すべてファン・シャーゲン建築設計事務所提供。 |