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| 図1 集合住宅の設備の区分 |
集合住宅団地の設備は、団地設備、住棟設備、住戸設備に分けられます(図1)。
中でも、近年の技術進歩によって、設備の魅力を実感できるのは、実は住戸設備なのです。しかし魅力的な住戸設備を欲しいと願っても、集合住宅にはさまざまな制約があり、自由に、満足のいく変更ができないという現実があります。住戸設備をグレードアップしたいと願う居住者の要求にどう応えられるかが、団地再生のこれからの重要な課題と言えます。
1.住戸設備の経年劣化が進んでいる
[住宅設備機器の
劣化のパタン]
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図2 設備機器の劣化カーブ |
団地や住棟の共用部分にある配管やポンプなどの設備の耐用年数は、おおむね20~30年ぐらいです。しかし、住戸内の設備機器については、更新すべき時期がはっきりしていないのが現状です。近年、ガス機器などの経年劣化による火災や中毒事故が多発しています。経年によって老朽化した機器のトラブルは予見しがたく、ある日突然に発生します。可動部や燃焼部をもった機器類は、図2に示すようなバスタブカーブを描いて老朽化すると言われています。設備機器がこの図の磨耗故障期に入るのは使用開始後10年ぐらいで、この時期を過ぎて度々同じような不具合が発生するときには交換対応を考えなくてはならないわけです。
[使用期間の目安を示す表示制度]
発生事故が人身危害につながるおそれのある設備機器、例えばガスや石油の給湯機器、ビルトインされた食器洗い乾燥機や浴室暖房乾燥機などについて、メーカーが設計時に想定した耐用年数をもとに標準使用期間を設定表示し、消費者に安全点検時期の目安を示す制度が、消費生活用製品安全法の改正にともない策定されつつあります。いわば設備の賞味期限の表示のようなものです。消費者も自宅の設備についての使用限度を認識し、適正に対処していくことが求められる時代に入ってきたと言えます。
[盲点は、住戸設備の更新システム]
このような制度の対象となる設備だけでなく、システムキッチン、浴室ユニット、サニタリー設備などの大型設備の経年劣化も軽視できません。人身危害こそ少ないと思われますが、漏水などによる下階への重大な被害に拡大するおそれのある設備だからです。
住戸内の設備改修は各戸の都合で行われるため、状態が住棟でバラバラなのが実情です。経年劣化した設備がどこかの住戸に残っていることは、住棟全体の安全性や資産価値を考えたときには問題なしとは言えません。住戸の大型設備も視野に入れた総合的な改修計画を考えることが、これからは必要と思います。現在、住戸内の設備を制度的に交換支援するシステムがないのが、集合住宅管理の盲点とも言えましょう(写真1)。
[設備改修を円滑にする細則の制定]
住戸の設備のグレードアップには住棟設備の方式や能力が支障になることがあります。例えば、高齢者のためにIHクッキングヒーターに交換したいと希望があったときは、まず各戸の分電盤の電気容量が50~60アンペアに変更できるかが鍵になります。住棟内の電気幹線の容量が足りない場合には、電気容量を増量できないことがあるからです。また浴室ユニットなどの位置を変更したいと思っても、換気ダクトのルートや排水立て管の位置などの制約条件があります。いずれも共用部分の変更に抵触する場合には、管理組合の了承や時には規約の改正が必要になるわけです。住戸設備のグレードアップを円滑に進めるためには、最低限必要な共用設備の整備を行い、希望を受けたらすぐ対応できる細則を用意しておくことが賢明です。
2.住棟におけるグレードアップ改修
[設備グレードアップの3要素]
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| 図3 住棟グレードアップ3要素 |
共用部分の設備グレードアップの改修には、エレベーター増設などのバリアフリー改修、屋上や外壁の断熱や開口部の気密化をはかる省エネルギー改修、住棟玄関のオートロックや防犯監視カメラの設置によるセキュリティ改修、高度情報回線導入によるIT改修などが挙げられます(注)。中でも省エネ、バリアフリー、セキュリティ改修は住棟のグレードアップ改修の3要素(図3)と言えましょう。そのうち、省エネは国家的な緊急要請であり、バリアフリー化は高齢者からの切実な要求であります。
[省エネ対策としてのサッシ交換]
とくに開口部サッシは共用部分に含まれますから、断熱性や気密性の高いサッシに改修することは、団地でできる最も現実的な省エネルギー対策になります。集合住宅はもともと窓面が大きいことが特徴ですから、これを交換できれば大幅に暖房の負荷を減らすことが可能です。断熱化は、室内の温度分布を良くするばかりではなく、結露防止や光熱費の削減にもつながり一石二鳥でしょう。
[高効率設備交換による省エネルギー]
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| 図4 エアコンの消費電力と省エネルギー率 (社会法人冷凍空調工業会) |
省エネルギー効率の高い設備機器を使うことも方策のひとつです。大規模修繕のときに共用廊下の照明器具、エレベーター、給排水のポンプなど共用部分設備の高効率化をはかることです。同時に、住戸内にある経年劣化して効率の悪くなった機器類の交換を組合員に勧めることが大切です。給湯機器やエアコンなどは年々、省エネ効率が高くなっています。10年前に比べて、エアコンなどは4割もエネルギー消費量が少なくなっているのです(図4)。管理組合の広報誌で設備機器の効率や節水率などの情報を提供したり、設備の上手な使い方を啓発したり、団地ぐるみで省エネルギーを促進することができれば素晴らしいことです。
[外付けエレベーターの設置]
高齢化がすすむ今、集合住宅のバリアフリー対策は重要な課題です。ストックで最も数が多いといわれる階段室型の低層集合住宅では、エレベーターの設置に対する要求が増えてきています。公的賃貸住宅では、外付けでエレベーターの設置が実施されていますが(写真2)、分譲マンションでは、まだまだ高いハードルがあります。おそらく、団地再生のハードウェア技術の中で最も期待されているのが、このエレベーター設置問題と言えます。今、国土交通省やUR都市機構が、民間企業と共同でこの問題に取組んでいるところです。
3.団地再生は共同自力の意識から
[個別システムから団地システムへ]
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| 写真2 外付けエレベーター設置例 |
住戸や住棟のグレードアップとともに再生しなくてはならないことは、コミュニティの活性化です。高齢化したコミュニティ、増えつづける空き家、退店がつづく団地内店舗、不安な団地内セキュリティ、遠くなった医療や福祉施設など、団地を支えるソフトインフラの再生がもっとも重要なことです。
設備でも住棟を超えたエリアの環境やエネルギー、ごみなどのインフラの自力整備が必要と考えます。電気も、熱も、ごみも、水も重要な資源だからです。全てが住戸で完結する個別システムは、便利で、他人に気兼ねなく快適かもしれませんが、資源やエネルギーを共有資産として捉えるという視点が欠落しがちです。
[団地規模でとらえる設備システム]
団地規模でまとめると新たな設備がイメージできます。例えば、団地内にガスや石油による熱源プラントを設置し、発生する電気は共用電源として使い、熱は住宅の給湯や共同浴場などに使うコージェネシステム、各住戸から排出される排水を浄化処理して、雨水とともにトイレ用洗浄水として再循環させる中水システム、団地の生活サービスや高齢者を見まもるITシステム、セキュリティや設備管理を一括する情報システムなどは、団地規模で始めて、高いレベルで実現させることができます(図5)。
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| 図5 団地ビジネスモデルマップ(2008) |
従来は、これらの設備は公共団体や電気やガス会社が、バラバラに行っていたものですが、民間資本が加わった新しいビジネスモデルが誕生することが期待されます。
[住宅団地の新たな目標と魅力発見]
住宅団地は過去には、都心に通勤するサラリーマンという、同一傾向にある人々が、効率よく住まう住宅集合体の一団として造られてきましたが、通勤という目的が希薄になり、生活形態も多様化してきた現在、団地に新たな目標を見出し、効率の追求とは違った、集まって住むことの新たな魅力を発見することが重要です。
個別分散化した設備をもう一度まとめ直すことが、改めて集まって住む良さを見直すことにもつながっていくのではないでしょうか。
(注)
『長期修繕計画作成と見直しの手引き』2004年11月 財団法人マンション管理センター発行 頁21
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