YKK AP 改装推進部 部長
 (よこたに いさお)
  横谷 功さん

1959年三重県生まれ。三重大学工学部卒業。2006年より、YKK AP(株)改装推進部 部長現任。


[図(1)]窓に対するニーズの変化例


■はじめに

—実際にマンションにお住まいの方から、よく聞く話—
 日本のマンションでもっとも頻繁に開閉される窓は、バルコニーに面したテラス窓ではないでしょうか。日本ではよく晴れた日に洗濯物をバルコニーで乾かす家庭が多いためです。1番多く開閉するわけですから、窓の不具合もテラス窓が1番多いのが現状です。
 具体的な声としては、(1)窓が重く開けづらい、(2)たまに全く開けられない、(3)網戸が動かないという内容が不具合アンケートの3割を占めます。窓の外側にある網戸については、築10年のマンションから修理依頼があります。そのままにしておくと、開けられない状況になるのも不思議ではありません。また開閉頻度の多い玄関のドアも同様です。開けづらい、重くなってきたなど、普段の生活の中で少しずつ不便さを当たり前にしている方が多く見受けられます。
 では、なぜ直さないのかと考えますと、窓・ドアは、個人の所有物ではなく、マンション全員の共有物のため、手をいれるには、管理組合の合意が必要になるからです。
 このような理由から窓・ドアの修理、手直しが進んでいないのが現状です。築30年のものについては、末期状態(取替えを余儀なくする)のものも多く見受けられます。

[写真(1)]複層ガラスにより、断熱性が向上し、結露が少なく省エネに効果がある [写真(2)]サポートハンドルにより、障子を開ける際の力を軽減させている [写真(3)]クレセントに加え、補助ロックとの二重ロック化で防犯性を向上させている

■窓・ドアの変化
—最近の窓はどうなってきているか、それはなぜか—
 アルミサッシが普及し始めたのが昭和40年代。当時の窓は、外の光を採り入れ、かつ雨・風をしのぐものであり、そのことだけで、快適な生活ができていたと思います。
 しかし、近年では、異常気象の影響から台風の被害の拡大やマンションの高層化により、窓からの水漏れを防ぐ窓の性能も高まっています。同時に地球温暖化現象から省エネの必要性も取りざたされており、窓の断熱化(複層ガラス)も当たり前になってきています。
 また、住環境では、自動車利用が高まり、幹線道路からの車の騒音に対して、または家の中で他人に聞かれたくない音を外に漏らさないようプライバシーの点でも窓の防音化が求められてきました。一方、ライフスタイルの変化?なのか、バルコニーは単なる物干しの場ではなく、ご家族の植栽(ガーデニング)などの趣味を楽しむ空間にもなっています。リビングからバルコニーはもはやマンション生活の中でもっとも家族の和のある空間と言えます。リビングの窓は、開放的で眺望が楽しめるように、また、光をより多く室内に採り入れるようになってきています[図(1)]。
 このようなことは、最近のマンション販売の広告に、「防音」・「省エネ」・「開放的な空間」および「セキュリティー(防犯)」の条件をもとに安全安心を訴えていることから分かります。
 以上から、窓に求められる役割が近年大きくグレードアップしています[写真(1)~(3)]。

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[写真(4)]新しい窓枠をかぶせて、リニューアル。簡単な工事の上に、下枠部の段差を解消し、安全な出入りができます

■21世紀型「窓・ドア」への道
—グレードアップをどのように考えるか—
 マンションリフォームの現状は、リビングをカーペットからフローリングへ、収納スペース確保としてクローゼットを、さらに水回りでは、台所、風呂場・トイレに最新設備を導入して快適性向上を目的としてリニューアルしているかと思います。一方、窓においては、マンション管理組合での合意が必要になり、そのリニューアルが進んでいない状況にあります。
 前述したとおり、窓の性能が最近大きくグレードアップされており、快適性向上には、窓・ドアのリニューアルも今後の生活を変える意味で重要と考えています。

[写真(5)]改修後、ガラス窓を通して、外部の木々の緑が一段と映える。室内もガラスが一新することで外の光を採り入れ、以前より明るくなったとの印象
 ところが、窓からの隙間風が寒いとか、外の音が入ってうるさい、また、窓自体開かないなどの不具合があるにも関わらず、窓リニューアルによっての快適性向上に疑問を抱いている方が多く見受けられるのが現状です。しかし、実際に窓の改修を行った後では、工事がスムーズに行われ[写真(4)]、隙間風がなくなり、エアコンを付けなくても部屋の中が暖かい、ガラスも取替えて非常にきれいになり窓からの景色が際立ち、快適性向上につながったとのお喜びの声をたくさん聞きました[写真(5)]。
 玄関ドアも同様に、隙間風がなくなったという話のほか、玄関を一新することにより、見栄えも良くなり、立派になったなどの意見が寄せられています。
 何といっても「玄関は住まいの顔」。いま流行りのドアデザインにより、建物全体のアクセントになり、資産価値の向上にも結びついていると思います。窓・玄関とも外部に面するものなので、特に都心部にお住まいの方々にとっては二重ロックによる防犯性向上で、安心感がこれまでと大きく違います[写真(6)]。
[写真(6)]ドアモールとグラフィックなデザインで、お洒落な落ち着いた雰囲気に変わります

■新時代の「窓・ドア」の普及のために
—新時代に向けての居住者とコンサルタントとの課題—
 2008年から地球環境問題としての温室効果ガス削減に向けた省エネルギーの対応・少子高齢化により、今後、住宅建設よりも既存住宅の質向上への転換について、政府からさまざまな施策が打ち出されています。しかし実際にマンションにお住まいの方にとっては、自らどのように取り組んでいけばいいかという問い合わせが多く、このことをマンション管理組合を通じて進めていくには、お住まいの方からの貴重な意見を取りまとめて反映していくことが重要になります。たとえば窓・ドアのどこをどうしたら良いか、修繕積立金からの予算をどのようにしていくかなど、開口部にかけるコストと生活面での快適性との関係です。
 今後、居住者とコンサルタント(設計事務所・マンション管理士・メーカーなど)がより多くの対話する場をもうけ、直接の対話により、それぞれの居住者が困っている点について、グレードアップする方法を探っていくことが求められると思います。
※写真(1)〜(6)は 「YKK AP」カタログより転載



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