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団地再生 -団地再生を考える-

団地再生シリーズ109弾

団地再生の法的課題

明治大学 理工学部 建築学科 専任講師
門脇 耕三(かどわき こうぞう)さん

1977年生まれ。2001年東京都立大学大学院修士課程修了。東京都立大学助手、首都大学東京助教を経て、2012年明治大学専任講師。博士(工学)。


団地再生は難しい

【図1】エレベーターと共用廊下が増築された団地
【図1】エレベーターと共用廊下が増築された団地

 この連載でもたびたび取り上げているとおり、現在の日本では、高度経済成長期に建設された、いわゆる「団地」の再生が大きな課題となっている。こうした団地は、戦後の住宅不足に対応するため、公的資金を投じて、大量に建設されたものであるが、建設から数十年を経ているため、現在の住宅に対する要求に適合しなくなっているからである。例えば、こうした団地は、構造体は健全であることが多く、今後さらに数十年の使用に耐えうるものの、バリアフリー対策が十分でなく、高齢化した居住者にとっては決して住みやすいものではない。そこで、階段を上らずとも住戸まで至ることができるように、建物にエレベーターと共用廊下を増築し、同時に住戸の内部も現代的なものへと改めるような再生が、2000年ごろからは実際に行われるようになってきている(図1)。

 しかし、このような再生が行われた団地を実際に目にしたことのある読者は、おそらく数えるほどだろう。団地再生は、技術的な整備は進んでいるものの、それが広く普及するには至っていないのであり、つまりまだまだ実行するのが難しいのである。

 では、団地再生が難しいのはなぜだろうか。その大きな理由の1つは、古い団地を現代的な住宅に改めるために、大規模な工事が必要となることである。工事が大がかりなものとなれば、コストがかかる。また、そこに住まう人々が、工事のあいだ一時的に引っ越しをする必要が生じ、住民の合意がなかなか得られない。さらに、団地再生が困難であることには、法的な理由も潜んでいる。簡単にいえば、日本の建築に関する法律は、新築を念頭に整備されてきたため、団地再生などの大規模な改修に対応しきれていないのである。そこで本稿では、団地再生を行う上での法的な課題について、詳しく見てみることとしよう。

団地再生のモデル計画を通じた法的課題の検証

【図2】筆者らが策定した団地再生モデル計画の平面図
【図2】筆者らが策定した団地再生モデル計画の平面図

 団地再生の法的な課題といっても、それを一般論として語ることは、なかなか難しい。建築についての法的判断は、具体の事例をベースとして下されることがほとんどであるからである。そこで筆者らは、実際に存在する団地についての架空の再生計画を立案し、建築確認を行っている複数の自治体の協力を仰ぎながら、それが法的にどのように判断されるのか、調べてみることとした。


 再生計画立案の対象とした建物は、工場で生産した大型の鉄筋コンクリート版を現場で組み立てる、いわゆるWPC構造という建設方式によって建てられた、築40年ほどの公営住宅である。ここでは、住戸までのバリアフリーアクセスを実現するため、エレベーターと共用廊下を増築する計画とした。また、この時代に建設された団地の住戸は面積が狭く、家族で住むには小さすぎるため、いくつかの住戸については、住戸間を区切る鉄筋コンクリートの壁に、幅1メートルほどの開口を設け、住戸面積を拡大する計画とした(図2)。住戸の外観も、現代的なデザインとなるように改めている(図3)。面積を拡大した住戸の平面図をみてみよう(図4)。ここでは、古い内装はすべて一新することとし、浴室もユニットバスにするなど、新築と同等の仕様としている。

【図3】団地再生モデル計画の完成予想図
【図3】団地再生モデル計画の完成予想図


 この再生計画は、架空のものであるといっても、工事が行える程度の詳細な図面を整備した。実際に団地再生を行う場合、計画の立案にあたっては、その過程で、計画案の法的判断に関する自治体との協議を重ねることが通常であるが、この計画でも、複数の自治体に随時相談し、計画が法的に適合しているかどうか、確認しながら進めることとした。

自治体によって異なる法的判断

【図4】団地再生モデル計画の住戸平面図
【図4】団地再生モデル計画の住戸平面図

 さて、結論からいえば、この再生計画についての自治体による法的判断は、いくつかの点で異なる結果となった。もっとも大きく解釈が分かれたのは、既存の階段室の取り扱いについてである。

 この再生計画では、もともとの階段室を、居住者が普段使用する階段としては利用せず、給排水管やガス管などの設備を格納するスペース(パイプシャフト)として活用している。これは、もともとの団地が、最新鋭の設備を格納するための十分なスペースを備えていなかったためである。また、このような計画とすると、通常はバルコニーに置かれることの多い、ガス給湯器や室外機などもこの場所に設置することができるため、バルコニーがすっきりするというメリットもある。しかし、そもそもこのような計画に至ったのは、既存の階段室を、居住者が普段用いる階段として継続利用することが、法的に困難である可能性があったためである。

 階段には、法的には屋外階段と屋内階段の2種類があるが、この団地の既存の階段室は、外周の2分の1以上が外気に面することという、屋外階段の定義を満たしていない。つまり、法的には屋内階段である。なお、屋内階段は、屋外階段に比べて、幅員を広く設計するように定められているが、この団地の階段室の幅員は、屋外階段の規定に準じて設計されていた。この理由は、火災の際に火がまわらないように、一定の面積ごとに建物が区画され、かつ区画された住戸同士を、建物の内部を経由して行き来ができないような計画とすると、階段の幅員に関する規定が緩和されるためである。もともとの建物は、階段室を共有する住戸ごとに、鉄筋コンクリートの壁で区画され、異なる階段室の住戸へ行くためには、いったん地面まで降りるような設計となっていたのである。しかし再生計画では、バリアフリーの達成のため、エレベーターと共用廊下が増築されており、いままでは地面まで降りないと行き来できなかった住戸同士が、廊下を介して行き来できるものとなってしまっている。こうなると、既存の階段室は階段の幅員が足りていないこととなるため、いくつかの自治体は、この階段を継続利用することは不可であるとの判断を下した。そこで、再生計画では、既存の階段室を階段として利用することはあきらめ、新たに屋外階段を増築することとしたのである。

 しかし、お話をうかがった自治体の中には、既存の階段室を引き続き利用してよい、との判断を下したところもあった。これは、共用廊下の増築によって、火災の際に、自分の住戸が面する階段室以外も避難に利用することができるようになり、むしろ再生前より避難安全性が向上するため、という至極まっとうな理由による。この解釈を採用する場合は、新たに屋外階段を増築する必要はないこととなる。ここで述べた以外にも、再生計画に関する法的な判断は、いくつかの点で自治体によって異なっていた。

団地再生の法的な難しさ

 以上のように、大規模な工事が必要となる団地再生は、現行の法律がこれに十分対応できるものになっているとは言い難いため、自治体によって、法的な解釈が異なってしまう場合がある。つまり団地再生は、計画が同じものでも、自治体によって許可される場合と許可されない場合が混在することがあり得るのである。しかし、法的判断は事例ベースとなるため、自治体との協議を行うにあたっては、ある程度は計画を進めておくことが必要となる。計画を進めるにもコストはかかるので、それが実行できるかどうかも分からなければ、計画を策定することがためらわれたとしても、無理のないことだろう。つまり団地再生は、法的な不確実性によって、事業リスクの高いものとなってしまっているのである。
 このような現状を打破するためには、実際の取り組みを、その法的判断も含めて、公開していくことが1つの有効な策であると考えられる。実際の事例が参照できれば、それに照らして、自らが手がける計画の善し悪しも、ある程度は判断できるからだ。団地再生の普及のためには、まだまだ地道な積み重ねが必要なのである。

団地再生まちづくり2

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よみがえるコミュニティと住環境

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 団地再生産業協議会
 NPO団地再生研究会
 合人社計画研究所

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団地再生研究会URL http://www.tok2.com/home/danchisaisei/
団地再生支援協会 http://www.danchisaisei.org/