管理に関するFAQ

管理費の滞納問題

敷地内の放置車両の撤去について

管理費等の長期滞納者の所有する専有部分が半年前に競売により落札されましたが、マンション敷地内の駐車区画に旧区分所有者(以下、「旧所有者」とします。)の車両(ナンバープレートがついている普通自動車)が放置されたままとなっています。旧所有者に放置車両の移動を要請しようとしましたが、所在不明で連絡がとれません。放置車両を撤去したいのですが、どのような手順で進めればよいでしょうか?なお、管理組合と旧所有者との間で取り交わした駐車場使用契約は、本マンションに区分所有権を有することを前提としており、区分所有権移転時に失効しています。

 駐車場使用契約が失効しており、放置車両は駐車区画を不法に占拠していることとなります。このような車両を撤去するための手順を例示します。
(1)旧所有者に対し『駐車区画明け渡し並びに未払い管理費等および不法占拠に対する損害金の支払い』を請求する訴訟を提起します。
 旧所有者は所在不明ですので、公示送達の手続によって、訴状の送達の効力を発生させることとなります。
(2)勝訴判決を取得します。
(3)車両の差押え(競売手続き)について裁判所に申し立てます。
 損害金支払いの勝訴判決に基づいて、放置車両の競売を申し立て、放置車両の価値が競売手続きの費用を上回る場合、競売手続きが進められ、落札者が放置車両を落札して持ち帰ることとなり、落札者がいなければ管理組合が落札し、その後売却や廃棄することで目的が達成されます。
 放置車両の価値が競売手続きの費用をまかなうことができないと判断された場合、裁判所は競売手続きを取り消します。
(以下、競売手続きが取り消された場合)
(4)駐車場明け渡しの強制執行を裁判所に申し立てます。
 明け渡しの勝訴判決に基づいて、明け渡しの強制執行を申し立てますが、執行官に放置車両について「無価値」であるかどうかを判定してもらいます。
 競売が取り消されたことに照らして、執行官が「無価値」と判定されると思われ、その無価値物の処分は債権者(管理組合)に委ねるのが一般的です。
(5)放置車両の廃棄処分を行います。
 廃車手続きが必要ですので、専門業者に手続きを依頼し、放置車両を引き取ってもらうことで目的が達成されます。
 これらの手続きは、非常に煩雑で、ケースによって必要な対応も異なり、かつ、多くの時間と手間を要しますので、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2015年11月掲載

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59条競売とは

理事長をしています。管理費の高額滞納者に対して訴訟を行い、確定判決を得ましたが、滞納金は支払われず、差し押さえることのできる財産もなく困っています。このような場合に59条競売という方法があると聞いたのですが、どのようなものでしょうか。

 区分所有法第59条は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をする区分所有者に対して、当該区分所有者の区分所有権の競売を請求することができる旨を定めています。
 この競売のことを一般的に59条競売といいます。
 59条競売とは、区分所有権を競売により剥奪することで区分所有者の迷惑行為を排除する最終手段といえる方法ですが、実際にこれを行うためには、次の要件を満たすことが要求されます(個々の事例により裁判所が可否を判断します)。
(1)区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
(2)59条競売以外の方法では、その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
 さらに、総会の特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議)が必要とされており、その際には、当該区分所有者に弁明の機会を与えなければなりません。
 なお、管理組合が管理費を滞納している区分所有者に対し訴訟を提起し、強制執行を行っても滞納管理費を回収できる見込みがない場合、59条競売の対象となり得ると考えられます。裁判手続きを経て59条競売により強制的に区分所有者を変更し、新たな区分所有者より滞納管理費を回収できる可能性があります。
 滞納者に対して59条競売を行うための要件(上記(1)(2))に合致するか否かの判断には、滞納期間、滞納額、過去の請求経緯等が影響します。また、競売が不成立となっては元も子もありませんから、競落人の見込みも付けておく必要があるでしょう。実際に行う場合は弁護士等に相談して進めるとよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2016年12月掲載

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滞納管理費等の充当先の指定について

理事長をしています。私どもの管理組合では、管理費等(管理費、修繕積立金、駐車場使用料)の滞納者が滞納管理費等の一部を支払った場合、支払期限の古いものから充当する運用としていますが、ある高額滞納者が滞納管理費等の一部を支払った際に「今回の支払いは駐車場使用料の滞納分です」と充当先を指定してきました。管理組合は、これに従わなければならないのでしょうか。なお、当管理組合の管理規約は、標準管理規約に準じています。

 債務者が債権者に対して、債務の一部を支払った場合、その充当方法については、以下の順位で定められることとなります。
第1順位 合意による充当
第2順位 費用・利息への優先充当(民法第491条1項)
第3順位 当事者の一方による指定による充当(民法第488条)
第4順位 法定充当(民法第489条2項・3項)
 第1順位の「合意による充当」とは、債務者と債権者との合意により充当方法を定めるものです。民法に明文の規定はありませんが、契約自由の原則によって最優先順位となります。
 第2順位の「費用・利息への優先充当」とは、まず費用(例えば、督促費用・訴訟費用等)、ついで利息(遅延損害金)に充当し、残額を元本に充当する方法です。
 第3順位の「当事者の一方による指定」とは、当事者の一方(第1次に債務者、第2次に債権者)が充当方法を指定するものです。
 第4順位の「法定充当」とは、まず、債務者にとって利益の多いものから充当し、債務者にとっての利益が同一の場合は、支払期限の古いものから充当する方法です。
 本問のケースでは、滞納管理費等の中に督促費用や遅延損害金等が含まれている場合は、まずこれらに充当され、充当後の残額を滞納者の指定により駐車場使用料に充当することとなります。
 まれなケースではありますが、滞納管理費等の充当順位について滞納者と合意できない場合、管理組合は特殊な滞納管理を余儀なくされるため、事務が煩雑になることが予想されます。これを回避する方法としては、管理規約に充当順位を明記すること等により、あらかじめ管理組合と組合員とで充当順位の合意をしておくことが考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2017年2月掲載

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長期滞納者に対する訴訟について

理事長をしています。当マンションには、滞納期間が4年近くになる長期滞納者がいます。管理会社より、再三の電話・訪問督促によっても回収が見込まれず、債務承認もしないため、管理費等の時効が5年であることを考慮して、管理費等の支払を求める訴訟を提起することについて提案がありました。このまま訴訟を提起しないで、滞納管理費が時効を迎えた場合、私の責任が問われる可能性はあるのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

 管理組合の理事長は、区分所有法に定める管理者とされており(標準管理規約第38条第2項)、管理者は委任に関する規定に従うこととされていますので(区分所有法第28条)、理事長には、善管注意義務があるといえます(民法第644条)。
 そして、理事長は、管理組合の役員として組合員のため誠実にその職務を遂行しなければなりません(標準管理規約第37条第1項)。
 さらに、管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講じなければならないとされています(標準管理規約第60条第3項)。
 これらにより、理事長が滞納者に対する訴訟提起を行わず、滞納管理費が時効を迎え、管理組合の財産が毀損された場合、他の組合員より理事長の責任を問われる可能性は否定できません。
 滞納者に債務を承認させるなどの方法で時効の中断を図ることはできますが、債務を承認しない場合や支払計画通りに支払われない場合などに、管理組合が一方的に時効を中断できる手段は訴訟(支払督促含む)しかありません。
 管理費等の滞納訴訟は全国に無数の事例があり、ほとんどの場合債務の存在について争いになることはなく口頭弁論も1回で終結するなど、極めて「事務的に」進捗する訴訟といえます。訴訟の提起は理事会決議で行うことができます(標準管理規約第60条第4項)ので、本件の場合、粛々と訴訟提起に向けた手続きを進めるべきでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2017年5月掲載

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